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2021年07月20日 13:00

【企業研究】福岡トップクラスの設備工事業者 好業績のカギは人材の連携による技術の継承(前)

大橋エアシステム(株)

 設立70周年を迎えた老舗の大手設備工事業者、大橋エアシステム(株)。地場大手の空研工業(株)、(株)菱熱としのぎを削りながらも好業績を収める同社の経営施策を検証する。

徹底した原価管理により財務体質を強化

 大橋エアシステム(株)は福岡で大型案件を扱う数少ない管工事業者の1社で、独立系企業として九州を中心に関東、関西に拠点を展開している。徹底した原価管理の下、安定した利益率を計上している同社だが、以前、大阪支店で大口得意先としていた三洋電機の業績が2000年ごろから悪化。そうした影響を受け、売上高は07年12月期の83億1,877万円から08年12月期には64億5,105万円に急落した。これを契機に、売上規模に重点を置いた経営方針から収益性を重視する財務体制に移行。社内に「原価管理室」という部署を設け、現場中心となっていた原価管理を専門部署で徹底しコスト削減を図った。

 財務体質の強化は「利益重視の選別受注」などの営業努力のほか、コストカットや損失減少など現場レベルの努力が寄与している。現場の努力の1つに瑕疵工事の大幅削減がある。技術管理部門が地道に過去のトラブル事例を紐解いて行う勉強会の開催、施工管理技術者同士のコミュニケーション円滑化を目的に情報交換用のタブレット端末を支給するなどの取り組みにより、トラブルの芽を事前に摘んで瑕疵工事を削減することに成功し、利益率のアップにつながっている。

技術力を高め大型物件受注

 また、潤沢な資産背景を誇り、福岡本社(福岡市中央区薬院)のほか、東京本店(東京都世田谷区)、南九州支店(鹿児島市東郡元町)を自社ビルとして保有する。それぞれ金融機関に融資枠を設けているものの、17年12月期から無借金経営を継続している。

 売上高は19年12月期が前期比20.4%増、20年12月期が同3.9%増と2期連続の増収をはたしている。エリア別の売上高構成比は、本社を置く福岡県および近郊が40%、関東地区が30%、鹿児島・宮崎が20%、関西地区が10%となっている。19年12月期には10億円台1物件、4億円台1物件、2億円台2物件だったが、20年12月期は受注額のボリュームが増加し、世田谷区立小中学校体育館空調設備設置工事・受注額8億円台のほか、6億円台2物件、3億円台2物件と大型物件を竣工したことが寄与した。

 また、売上総利益は12億1,073万円で前期比12.2%増、売上総利益率は1.19ポイント増の16%、営業利益は4億7,486万円で同38.5%増、営業利益率は1.6ポイント増の6.3%、経常利益は同35.9%増、経常利益率は1.5ポイント増の6.5%まで向上し、売上高の伸び率以上に利益を計上している。

 直近3期の当期利益を見ると、18年12月期が1億7,837万円、19年12月期が2億174万円、20年12月期が2億9,315万円と積み上げている。これにともない、20年12月期の自己資本比率は44.19%、流動比率は132.90%、当座比率は99.23%と高い値を示す。

大橋エアシステム 業績

 大手および地場ゼネコンからの受注を主体に、官公庁からも受注。過去3年を見ると、公共工事の比率が伸びている。20年12月期の受注工事の内訳は、下請が37億7,089万円で50.1%、公共工事が28億7,451万円で38.2%、民間元請が8億8,103万円で11.7%となっている。売上高と利益率が向上した要因の1つに、福岡市発注工事において9件連続で工事成績優良業者として表彰されていることが挙げられる。20年度は、「福岡競艇場東スタンド棟内部改造空調設備工事」が受賞している。国土交通省、文部科学省、九州防衛局、福岡県、福岡市発注の工事において、すべての案件で100点満点中80点以上の評価を受け、各行政機関から表彰されるなど、技術力に対する業界内外の評価は高く、より利益率の良い大型物件の受注につながっている。

技術力継承に注力

 さらに、独自の人材育成プログラムおよび社内コミュニケーションの強化、つまり「人材」育成への取り組みを行っている。長年地道に取り組んできた若手・中堅社員の勉強会や課長クラスによる各現場のアドバイス巡回、ほかの支店担当者が違う視点から見た社内検査を実施することで、主任クラスの1人立ちが早くなり、1人あたりで担当できる工事量が増加している。

 業界全体の問題である採用難の状況にあっても、例年5人以上の新卒採用者を確保しており、21年4月にも8人が入社している。採用方法についても改善が図られており、以前は福岡本社のみで採用を行い、各支店に送り出していたが、社員の定着率が上がらなかった。そのため、採用を各支店で行い、採用者を本社に集めて1年間の研修期間を設け、基礎教育と会社の理念浸透を徹底して行っている。

 「採用から人を育てること」に注力している同社では、社員育成にベテランシニア社員から若手社員への技術力継承勉強会を行っている。長年続けている全体での技術勉強会とは別に、定年を迎えたベテランシニア社員から技術顧問を選任し、各担当の経験値、得手不得手を把握したうえで、個別の勉強会および巡回検査を実施することで、先人が培ってきた技術力の継承を図っている。それにより、空気調和設備工事が得意な者と給排水・衛生工事が得意な者との技術力の平均化を図り、たとえば、元請先からある社員をつけてほしいといわれても、ほかの社員を送れるように、誰もがさまざまな現場を担当できるような体制を整備している。資格取得にも積極的で、一級管工事施工管理技士が66人、二級管工事施工管理技士が14人、排水設備工事責任技術者が56人、給水装置工事責任技術者が53人(21年3月末現在)など多くの資格保有者を擁している。

(つづく)

【内山 義之】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 久行
所在地:福岡市中央区薬院2-3-41
設 立:1951年1月
資本金:9,000万円
売上高:(20/12)75億6,400万円

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