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2021年07月29日 15:25

IR事業者として飛躍できるか エンタメ企業セガサミー(後)

遊技機とIR事業で連携できるか

 IR事業を行うパチンコ・パチスロメーカーは、セガサミーだけではない。大手メーカー、(株)ユニバーサルエンターテインメント(以下、ユニバ)は、グループ企業のTiger Resorts, Leisure and Entertainment Inc.を通じてフィリピンでIR「OKADA MANILAⓇ」の企画・管理・開発を手がけている。オカダマニラは17年にグランドオープン。カジノ、ホテルはもちろんのこと、フィリピン最大規模となる屋内ビーチやナイトクラブ、高級レストランやギフトショップが入るなど、世界トップクラスのIRとして知られている。

 セガサミーも同じくグループ会社のパラダイスセガサミーを通じて「PARADISE CITY(韓国)」の開発・運営を手がけているが、売上規模ではオカダマニラの後塵を拝する格好だ。

【IR事業 業績概略(単位/百万円)】

※20年12月期は新型コロナウイルス感染拡大防止にともなうロックダウンの影響アリ。

※21年3月期は新型コロナウイルス感染拡大防止にともなう主要施設閉鎖の影響アリ。

   両社ともにIR事業の直近の業績は振るわなかったが、コロナ禍ということで想定の範囲内だろう。むしろ、今テコ入れが必要なのは遊技機事業だ。パチンコは確変継続率65%という上限が撤廃され、約93%(『P大工の源さん超韋駄天』)まで向上するなど、遊技ファンにとっても遊びがいのある機種が登場してきており、ホールでの高稼働にも貢献している。

 しかしスロットにおいては、いわゆる「2,400枚規制」が依然続いており、この撤廃がない限り、ファンの回帰には望みがもてない事態に陥っている。打ち応えのある台がないわけではないのだが、スロットは遊技の醍醐味である大あたり続く面白さを欠いた状態であり、新台であっても導入後1週間で空き台が目立つようになるなど、ファン離れが顕著になってきている。こうした厳しい現状は、ホール側のスロットエリアの縮小、低貸し化(5スロ、2スロ)の加速という対応からも見て取れる。

 スロットの販売台数自体は、ホール側が旧基準機から新基準機への入れ替えを進めなければならないため、伸びてはいる。ユニバは20年12月期で前期比約7万台増となる12万8,000台超のスロット(『バジリスク~甲賀忍法帖~絆2』など)を販売し、同年のスロットトップシェアメーカーに輝いている。サミーも、同年3月期で前期比約3,000台増となる12万3,000台超のスロット(『DISC UP』増台など)を販売した。

 だが、この販売台数の伸びは改正風営法に依るところが大きく、官制需要の側面が強い。事業基盤の強化は、やはり自社主導でなされるべきだ。たとえば、両社ともにアメリカにおけるカジノ向けゲーミング機器の製造・販売ライセンスは取得済のため、ライセンスの取得エリアを増やすことで、施設の開発・運営だけにとどまらない、IR事業領域の拡大が見込めるはずだ。そしてそれは、遊技機事業のノウハウの活用、各事業間でのシナジー効果の発揮にもつながる。

 とくにセガサミーの場合、セガの人気コンテンツを採用したスロットマシーンを製造することで、既存のゲーミング機器には見られない映像演出を見せられるはずだ。このように、同社のゲーミング機器の製造・販売事業は、高いポテンシャルを秘めている。

国内初のIR事業参画となるか

 カジノ法案が可決し、国内初のIR誕生へと世間が色めきたつなか、横浜IRへの挑戦を決めたセガサミー。同社がIR事業者になるためには、競合相手であるメルコリゾーツ(中国)と大成建設からなるグループの提案に打ち勝つこと、そして、横浜が最大3地域とされる区域認定を得ることが最低条件となる。

 セガサミーはゲンティン・シンガポール・リミテッドを代表とするコンソーシアムの一員という位置づけだ。仮に同コンソーシアムが市のパートナーに選定され、その後横浜IRが確定したとしても、セガサミーに大勢を決めるような主導権はない。それでも同社が国内IRにこだわるのは、創業者である里見治(さとみ・はじめ)氏の思い入れの強さもあるだろう。セガサミーを国内屈指のエンタメ企業へと成長させてきた治氏は、国内IRへの参画をもって、セガサミーを名実ともに国内No.1のエンタメ企業へと昇華させたいのではないか。同社の国内IRへの挑戦は、治氏のビジネス人生の集大成ともいえる。その覚悟は、ゲームセンター運営事業からの撤退、希望退職者の募集や役員報酬の減額の断行からも伝わってくる。こうした構造改革にともなう費用は、総額341億9,100万円におよぶ。

 はたしてセガサミーは、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれを地で行くことができるのか。まずは、IR賛成派・反対派が入り乱れ、史上最多となる立候補者によって争われる、8月22日投開票の横浜市長選の結果が注目される。

(了)

【代 源太朗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:里見 治ほか1名
所在地:東京都品川区西品川1-1-1
設 立:2004年10月
資本金:299億5,312万円
売 上:(21/3連結)2,777億4,800万円

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