2024年02月29日( 木 )

コロナ後、不動産業者に求められる コミュニティ形成の役割

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出典:国土交通省・第1回『「ひと」と「くらし」の未来研究会』青木純氏資料
出典:国土交通省・第1回『「ひと」と「くらし」の未来研究会』青木純氏資料

共創型コミュニティと共有財

 コロナ禍を契機に、改めて「ひと」が集い、営む「くらし」に注目する国土交通省(以下、国交省)では、さまざまな分野における専門家たちとの議論を通じて、くらしに関する新たな価値観を創造しようとしている。今年5月には、第1回『「ひと」と「くらし」の未来研究会』(以下、未来研究会)を開催。以降、地方(ローカル)や共同体(コミュニティ)を主軸に、議論が重ねられた。国交省は、複数回の議論の内容をまとめ、今後施行されるまちづくり関連の政策に活用していきたい考えだ。

 未来研究会では、多様な立場の人や企業が垣根を越えて、新しい価値をともに創出し、その価値観に基づき生活する共創型コミュニティが提示された。同コミュニティにおいては、参加条件にあらかじめ価値観の共有を設けることで、メンバー間での意思疎通がしやすくなるというメリットがある。

 たとえばイタリアには、作曲家のジュゼッペ・ヴェルディ氏が建てた「カーサ・ヴェルディ」という共同住宅が存在する。入居条件は音楽家であること。カーサ・ヴェルディは主にリタイア世代向けの住居だが、現役の音大生も入居しており、大先輩が経験を、現役生が最新のトレンドを相互に共有するなどして、世代間の交流が生まれているという。このように、入居条件に価値観やキャリアを設定し、あえて間口を狭めることは、住民の居心地の良さ=くらしやすさにもつながる。多世代集合住宅という付加価値を生み出すことも可能だ。

 人口減少と超高齢化が進む日本で、将来的にインフラ維持が困難を極めるであろうことは想像に難くない。住まいとして選択できる場所も限られていき、住み替えの選択肢も狭まっていく可能性が高い。だからこそ、くらしの拠点となり、自身が所属するコミュニティへの関わり方が、ますます重要になる。社会変容によるインフラの放置に歯止めをかけるためにも、これまでにない新しいコミュニティの形成と、同コミュニティに対する既存資産の共有財(※)としての提供は、現実的な選択肢として考えておく必要があるのだ。

※共有財:コミュニティの構成員によって共同で利用、管理される資産や資源。

『「ひと」と「くらし」の未来研究会』

デジタルで補完する田舎暮らし

 田舎は、共有財の考え方を実行しやすい規模感でもある。地域住民が各人のスキルを生かして、域内インフラを自分たちで維持・管理していく。これなら透明性も担保され、安心なくらしを実現しやすくなる。コミュニティ内でのみ流通する通貨や、各人のスキルを生かした相互扶助など、「自分たちだけの経済圏」をつくるという試みにも挑戦しやすい。域内で調達できないものはオンラインサービス(例:オンラインで診療し、薬をドローン配送)に頼るという選択もできる。

 域内の住民は、最低限必要なサービスを互いの協力やオンラインサービスの利用を通じて享受しながら、特定の季節(行楽シーズンなど)に域外から誘客し、外貨を稼ぐ。普段は農業をしながら自給自足を行い、大名行列の時期になると宿場町として大きく儲けるといった、かつての農村の生活様式に近いかもしれない。

不動産事業者の役割とは

 人口減少と超高齢化といった社会変容のなかで、人々のくらしは地域や集落といったミニマムな規模に収斂されていくものと考えられる。そして、地域や集落レベルになると、人の顔が見える分、日々の付き合いから醸成される、信頼を担保にした不動産の流動化が果たされる。「〇〇さんの紹介がないとダメだ」という話を耳にすることがあるが、こうした商慣習が顕著になっていくものと予想される。共創型コミュニティ内ともなれば、なおさらだ。そこに事業者が介在する余地はない。

 では、これからの社会で、不動産事業者に求められる役割とは何なのか――。

 国交省主催の未来研究会で示されたのは、「場の提供者」としての役割だ。共創型コミュニティを形成するにも、個人の訴求力には限界がある。そこで、不動産事業者が場をセッティングするのだ。場所はリアルでも、オンラインでも構わない。コミュニティ形成のきっかけをもたらす、コミュニティプランナーとしての役割が重要度を増す。不動産事業者にとっても、コミュニティ形成の段階から関わりをもつことは、その後のコミュニティによるまちづくりに参画しやすくなるという利点がある。また、コミュニティは規模が大きくなりすぎると維持が難しくなるとされており、半径2kmや構成員は最大で150名程度など、スケールデザインが肝となる。不動産事業者は、形成されたコミュニティを第三者視点で見守る、「調整役」としての役割も担うことができるのではないか。そのほか、所有不動産を共有財としてコミュニティに供給する、サプライヤーとしての役割も考えられる。

 共創型コミュニティは、単に生活基盤を共有する集団ではない。もはや「縮小時代」に不可欠な社会インフラなのだ。そして、そのインフラ整備の旗振り役として、不動産事業者の活躍が期待されている。

【代 源太朗】

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