2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

小売こぼれ話(7)3分の1ルール(後)

食品ロスを防ぐ2つの方法

スーパー 惣菜 イメージ 商品の廃棄ロスをクリアするには2つの方法がある。1つは、なるべく商品量を絞って値下げやロスを少なくするやり方。ボリューム不足や品切れで販売の機会を逃しても仕方ないという判断だ。

 もう1つは、フルボリュームの売り場をできるだけ長く維持し、鮮度感と豊富な選択肢を保ち、「買える売り場」をなるべく長時間維持して売上を大きくするやり方である。このやり方は販売機会のロスが少なくなる代わりに、商品量に見合った客数が確保できないと廃棄ロスが増える。近隣の店がリスクをとらない売り場なら、このやり方によってより多くの集客を図ることができる。

 安く売ることも、当てになる売り場づくりのいずれも、経営者にとって勇気が求められる。安く売ってもし目論み通りの売上が取れなかったら…、多くの商品を売り場に出してもしロスになったら…。

 以前、アメリカで夜間のスーパーマーケットを視察した際に、気になったのが廃棄される大量の総菜や生鮮食品の行く先だった。現在はどうかわからないが、当時は救世軍(プロテスタント系の慈善団体)に寄付し、彼らが恵まれない人やホームレスに届けるという話を聞いた。

 我が国でも一時、そのような動きがあったが、消費期限や食中毒の問題で世論に押され、あっという間に消え去った。かろうじて残っているのは日持ちのする加工食品で、賞味期限の残りが短くなった商品だ。しかし、メーカーもデータに基づく計画生産を行っているため、やたらと過剰在庫が発生することはない。年間600万トンともいわれる食品ロスの大半は、家庭やレストランでの食べ残しというところだろうか(農水省の調査:家庭系46%、外食産業19%、食品メーカー21%、食品小売業11%、食品卸3%)。

 ちなみに、スーパーマーケットの廃棄商品のほとんどは焼却処分となる。違った角度で見ると、アメリカの食中毒による死者は年間5,000人を超える。日本ではここ数十年、10人以下だ。その理由は定かではないが、鮮度が求められる生の魚を消費する食習慣と、異常ともいえる清潔感のなせる業かもしれない。それでも戦前は200~300人の死者が出ていたことを考えると、冷蔵庫の普及や上下水道の整備、食品衛生法に基づく保健所の指導など多岐にわたる理由があるのだろう。

死語となった「もったいない」

 日本語に「もったいない」という言葉がある。もったいないは「勿体ない」と書く。山幸海幸の神話にある山幸彦が狩りをしたという小山が、南九州・宮崎にある。その名は勿体森。恐れ多いことや禁止を表す言葉だ。「勿来の関」も同じだが、その言葉は今や死語に近い。

 筆者が幼かったころ、主食はもちろん副食も食べる前に、においをかいでいた。夏場なら朝炊いたご飯は臭う。だから、お湯で洗って食べた。多少腐りかけたものも同じだ。腐っているからといって食べたら即、食中毒とは限らない。

 飢餓が発生している国では、腐ったものでも食べなければ生きていけない。運が悪ければ、サルモネラ菌などの食中毒の原因となる菌がいっぱいの残飯に出会う。そんな世界もある。このようなことを思いながら、仕事柄、長い間、廃棄される生鮮食品を見てきた。

 我が国の食料自給率は37%(カロリーベース)。1カ月間、石油がなくても恐らく人は死なない。しかし、同じ期間、食べ物がないと人は死んでしまう。売り手も買い手も、たまにはそんなことも考えながら生鮮食品の売り場を見てほしい気もする。

(了)

【神戸 彲】

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