2024年04月29日( 月 )

“今”を生きていますか? ジャパネットたかた創業者が特別講演(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
(株)A and Live 代表取締役 高田 明 氏

 信金中央金庫は8月26日と27日、創業支援プラットフォーム「しんきん創業の扉」の公開を記念し、特別講演を開催した。講演は(株)システムソフトが運営するコワーキングスペース事業fabbitの全面協力の下、YouTubeでライブ配信された。初日は(株)ジャパネットたかたの創業者で、(株)A and Live代表取締役高田明氏が講演。コロナ禍の長期化、近年続く自然災害などで理不尽な苦境に立たされる経営者や、創業に燃える人へ向けて、「“今”を本気で生きているか」と実体験を踏まえながら問いかけた。高田氏の講演内容を紹介する。

「一生懸命やらなかった」は失敗

 経営をしていくなかで大切なことの1つに、専門的な部分を追求することがあります。そして、専門的なことを頑張っている人には必ず多様性がついてきます。さまざまな人や書物と出会い、いろいろな経験をしながら年を重ねていくと、多種多様な発想ができるようになります。

 ビジネスは、数字の傾向を見るだけではうまくいかない部分があります。そこにはプラスアルファの発想と閃きが必要です。この閃きは右脳の働きです。一生懸命頑張るというのは左脳の働きです。この両方が必要です。しかし、右脳は左脳を使うこと、一生懸命頑張り続けてこそ、働き始めます。困難な問題に対してどう乗り越えていこうかという発想は、苦労と左脳の力を経て生まれてきます。

講演後にはトークセッションが行われた
講演後にはトークセッションが行われた

 そして多様性がついてくれば、仲間にめぐり合います。売上高2,000億円の会社をつくったといわれますが、私の力は5%もないと思います。仲間に助けられて育った会社でした。

 “今”を一生懸命生きている人には、同じ価値をもった仲間が集まってきて助けてくれます。企業も同様に社長や役員が頑張れば、ついてくる社員が増えてきます。このようにして、コロナ禍や自然災害を乗り越えられる企業の精神が培われていくと考えています。

 人は壁にぶつかったときに、できない理由を探してあきらめていないでしょうか。そのなかに、5%でもできることを考える。その5%を100%に膨らませるために、自分が何をやればいいか、自分の会社が何をやればいいかを本気で考えていけば、そこにヒントとチャンスが必ずあります。

 不可能なことや失敗することはあります。でも、可能性を信じてやることで夢を達成できます。自分や自分の会社は、もうこれ以上のことはできないと考える人もいるでしょう。しかし、アフターコロナは必ずやってきますから、そのときに今の会社をどのように立て直していくか、何を新しくやっていくかを考え抜いていけば、必ず乗り越えられると思っています。

 私の事業は、長崎県平戸市という小さな田舎町から始まりました。場所や市場、企業規模など、一見難しいと思われる理由はいくらでもありました。でも、一生懸命やり続けてきたからこそ、2010年に売上高1,759億円の会社になっていました。

 「格差がある」という言葉を出したときに、もう負けています。学歴や偏差値などをいい出したら、その時点で自分が負けている。そういうことは関係ないのです。私の人生に失敗はありません。私が思う失敗とは、「やらなかったこと」と「やったが一生懸命やらなかったこと」です。私にもこれまでうまくいかなかったことは山ほどありますが、そのときは失敗ではなく、試練と捉えてきました。

 自然に降りかかってくる困難や、うまくいかなかったことを試練として受け入れる。そして、考え抜いて乗り越える力が非常に重要です。

(つづく)

【文・構成:麓 由哉】


<PROFILE>
高田 明
(たかた・あきら)
(株)A and Live代表取締役。1948 年生まれ、長崎県平戸市出身。大阪経済大学経済学部を卒業後、機械メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。74 年に父親が経営するカメラ店へ入社し、86年(株)たかたとして分離独立。90年にラジオショッピングを行ったことを機に全国にネットワークを広げ、その後、テレビやインターネットなどでの通販事業を展開。2015年に(株)ジャパネットたかた代表取締役退任後、17年にプロサッカークラブ(株)V・ファーレン長崎の経営に参画し、20年まで代表取締役社長を務めた。現在は、「今を生き生きと生きる世の中にしたい」という思いの下、取材や講演などで社会貢献のメッセージを精力的に発信している。

(前)
(後)

関連記事