2024年05月15日( 水 )

“今”を生きていますか? ジャパネットたかた創業者が特別講演(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
(株)A and Live 代表取締役 高田 明 氏

 信金中央金庫は8月26日と27日、創業支援プラットフォーム「しんきん創業の扉」の公開を記念し、特別講演を開催した。講演は(株)システムソフトが運営するコワーキングスペース事業fabbitの全面協力の下、YouTubeでライブ配信された。初日は(株)ジャパネットたかたの創業者で、(株)A and Live代表取締役高田明氏が講演。コロナ禍の長期化、近年続く自然災害などで理不尽な苦境に立たされる経営者や、創業に燃える人へ向けて、「“今”を本気で生きているか」と実体験を踏まえながら問いかけた。高田氏の講演内容を紹介する。

コロナが気づかせたチャンス

 今、本当にいろいろなところでピンチですよね。それは日本だけでなく、世界中でも起きています。コロナ禍だけでなく、地球温暖化による自然災害などで、多くの方が今後の先行きについて不安を感じているかと思います。「今、心は折れていませんか?」と問いかければ、「折れていません」と答えられる人の方が少ないと思います。

 たしかにピンチですが、私はただのピンチにしてはならないと思っています。ピンチのなかには必ずチャンスがあり、どのようにピンチをチャンスと捉えてつくり出していくかということが、一番大事ではないかと思っています。たとえば、日本の政治を振り返ってみると、そんなに危機管理の能力が弱かったのかなと感じます。これまで効率化に重きを置いてきたがために、コロナなどの突発的なアクシデントに対応できない状況が続いています。日本のコロナへの対応は、諸外国と比べても遅れている部分があると思います。

 でも私は、この部分に気づいたことがチャンスだと思っています。もし、このような状況がなければ、そこに気づくことはありませんでした。水害もこれだけ頻繁に起こるからこそ、世界中の人々がSDGsをはじめとした本格的な温暖化対策へ乗り出したと思います。

 ピンチになる状況に気づけたからこそ、チャンスにつながります。これはビジネスでも同様のことがいえます。私は現役時代にも、テレビショッピングのMCとしてスタジオに立ち続けながら、このように感じることが多々ありました。

(株)A and Live 代表取締役 高田 明 氏
(株)A and Live 代表取締役 高田 明 氏

“今”を生きていますか?

 どのようにしたら、ピンチをチャンスにできると思いますか。私は、人は一生懸命頑張ったら必ず思う通りの自分になると考えています。企業も一緒です。これは間違いありません。夢は実現します。だから「夢を持ち続け日々精進」しなければなりせん。このようにいうと、「現実はそこまで甘くない」という人もいます。そのように言いたくなる気持ちもわかります。しかし、夢をもち続け、一生懸命努力し、精進し続ければ、必ず実現すると思うのです。

 コロナ禍や自然災害でも、明日はどうなるだろうか、1年後はどうなるのかと、未来への不安を感じているかと思います。そのほとんどが、自分の力では変えられないことに悩んでいます。経営やビジネスも一緒です。私も現役時代に消費税が3回上がり、業績が大きく下がりました。でも、増税は国が決めたことで、悩んでも解決にはなりません。まずは現状を受け入れることです。グローバル化が加速する現在では、米中の情勢などを含め、このような事態は多くあると思います。

 コロナ禍はとても大変な状況ですが、現状を受け入れることからでしか明るい未来をつかむことはできません。8割または9割を占める自分の力では変えられないことに悩んでいても、何も変えることができないのです。

 過去にとらわれず、未来に翻弄されず、“今”を生きて、自分で変えられることに全力を注いでください。今、自分たちが変えられることを一生懸命、考え抜いてください。社員がいる経営者の方はともに一生懸命、何度も話し合ってください。それが“今”を本気で生きているということです。

 今回、創業に向けた方へのバックアップを目的とした「しんきん創業の扉」というすばらしいプロジェクトがあります。しかし、いくらすばらしいプロジェクトがあっても、今を一生懸命生きていない人たちには、その「扉」は問題を解決してくれません。私はこの状況だからこそ、会社の強みや弱み、現状分析などを徹底的に研究すべきだと思います。それをベースにして相談しなければ、投資やアドバイスを受けても、本気でその会社の姿を変えていくことはできないと思います。

(つづく)

【文・構成:麓 由哉】


<PROFILE>
高田 明
(たかた・あきら)
(株)A and Live代表取締役。1948 年生まれ、長崎県平戸市出身。大阪経済大学経済学部を卒業後、機械メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。74 年に父親が経営するカメラ店へ入社し、86年(株)たかたとして分離独立。90年にラジオショッピングを行ったことを機に全国にネットワークを広げ、その後、テレビやインターネットなどでの通販事業を展開。2015年に(株)ジャパネットたかた代表取締役退任後、17年にプロサッカークラブ(株)V・ファーレン長崎の経営に参画し、20年まで代表取締役社長を務めた。現在は、「今を生き生きと生きる世の中にしたい」という思いの下、取材や講演などで社会貢献のメッセージを精力的に発信している。

(中)

関連記事