2022年01月23日( 日 )
by データ・マックス

会社経営のヒントは歴史にあり 現代に生かされる先人たちの選択(後)

(株)COTEN 代表 深井 龍之介 氏

 福岡市中央区大名に位置する「Fukuoka Growth Next」。福岡市の官民協働型のスタートアップ支援施設である同施設には145社(2021年5月末時点)の企業が入居し、着々と活躍の場を広げている。入居する(株)COTENは今年6月、計9件を引受先とする総額8,400万円の資金調達を達成した。「人類が、人類をより深く理解することに貢献する」をミッションに掲げ、歴史のデータベース構築を行う同社の深井龍之介代表に話を聞いた。

「事実」を伝えるために

 我々日本人がこれまで教育のなかで触れてきた歴史は、基本的に日本という国家の視点に立って語られたものだ。「戦争の結果」1つをとっても、勝者と敗者だけでなく、第三者の視点も存在する。漁夫の利を得た国もあれば、まったく影響がなかった国もある。同じ事象を経験していても立場が異なれば、解釈は大きく変わる。情報を扱う者は事実を伝えなければならない。しかし、同じ事実であっても、片方の立場から見た情報だけでは間違った受け止め方をする可能性もある。

 「歴史の事実を『解釈を含むことなく』お届けする」—同社のポリシーの1つだ。このようなフラットな姿勢が、同社にさまざまな国籍や経歴を持つ人材が集まる理由なのかもしれない。業務面で多様な人材が集まることに問題はなく、むしろ多角的な視点・思考が生まれることから歓迎しているという。全社員がリモートワーク体制をとっており、社員の居住地が日本、アメリカ、コロンビア、ギリシャとなっていた時期もあった。

歴史を学ぶことは社会をメタ認知すること

 同社が広報活動として行っているのが、「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO(コテンラジオ)」だ。深井氏をはじめとする3人のパーソナリティーが、決められたテーマに合わせた歴史を語る番組である。

COTEN RADIO収録風景修正
COTEN RADIO収録風景

 PodcastとYouTubeで2018年から放送開始。19年に「Japan Podcast Awards大賞」と「Spotify賞」をダブル受賞、またApple Podcast総合ランキング1位(21年6月30日時点)を獲得するなど、その評価は高い。実は同番組のリスナーには経営者が多い。前述したように、社会的地位の高い人が歴史に関心を寄せている様子がうかがえる。この点について深井氏は次のように解説する。

 「彼らは歴史に興味があるというよりも、自分たちが所属する社会や組織だけでなく、そのほかの社会をもメタ認知(自分の認知活動を客観的に把握)したいのだと思います。俯瞰的な視点から学びを得ることに興味があるのではないでしょうか」。

 歴史とはまさしく過去の社会を俯瞰する行為だ。どのようにして国が隆盛を極め、滅亡していったのか。数々の為政者はどのような統治を行ったのか。「COTEN RADIO」のリスナーのメイン層である30~40代は、社会に飛び出して十数年が経過し、複数の組織を経験したり、老若男女を問わずさまざまな人々と出会ったりしていくなかで、さまざまな疑問が浮上してくるころだ。時にはまったく違う発想の人物と出会い、理解できずに頭を抱えてしまうかもしれない。そのときに歴史を紐解き、過去の社会のメタ認知ができれば、自分にはなかった考え方に触れることで、実生活において物事の捉え方を変えたり、自分と違う考え方の人物に対しても「そのような発想があるのか」と受け止めたりできるようになる。

 過去の歴史が現代の私たちに生かされる。それに気づいた人は歴史への興味が高まり、さらなるメタ認知を求めて深く学ぼうとするサイクルが生まれる。

歴史は「選択肢のカタログ」

 VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代となった昨今、相次いで浮上する多くの疑問に頭を抱える人は多い。しかし、その疑問は先人たちも直面したものかもしれない。そのとき、彼らはどのような選択肢をもち、そのなかから何を選び取ったのか。

 先人たちの選択肢が詰まった歴史というコンテンツは、いわば「選択肢のカタログ」である。とくに経営者とは孤独なもの。経営者特有の悩みは信頼する部下にも相談しにくいものであり、1人で抱え込んでしまう。歴史はそんな経営者を救う光となる。

(了)

【杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:深井 龍之介
所在地:福岡市中央区大名2-6-11
設 立:2016年2月
資本金:3,563万5,400円
URL:https://coten.co.jp


深井 龍之介 氏<プロフィール>
深井 龍之介
(ふかい・りゅうのすけ)
島根県出雲市出身。九州大学文学部社会学研究室を卒業後、大手電機メーカーの半導体部門経営企画に配属。その後、福岡のベンチャー企業2社で取締役を経験し、2016年2月に(株)COTENを設立した。同社代表を務める一方で、複数社のスタートアップ、ベンチャー企業の取締役を兼任している。

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