2022年07月08日( 金 )
by データ・マックス

【福岡】免震偽装のタワマン、解体後の土地利用を考察

補償は交換でなく買い取り

カスタリア大濠ベイタワー
カスタリア大濠ベイタワー

 大和ハウスリート投資法人が売却することを発表していた、福岡市中央区の30階建の賃貸用タワーマンション「カスタリア大濠ベイタワー(以下、カスタリア大濠)」をTOYO TIRE(東証一部)が取得した。売却は9月末で、売却額は37億4,000万円。大和ハウスリート(当時、大和ハウス・レジデンシャル投資法人)は13年3月に29億1,000万円で取得しており、譲渡益は13億3,500万円となる見込み。

 ディックスクロキ(当時)が企画したカスタリア大濠は、設計を小野設計、施工をピーエス三菱などが手がけて2006年9月に竣工、同社が組成した私募ファンドにも組み込まれていた。竣工当時は九州最大級のタワーマンションで、ICタグを使った二重セキュリティーや全戸天然温泉水蛇口の設置、そして免震構造などが注目を集めていた。

 この免震構造に使われたのが、東洋ゴム工業(現・TOYO TIRE)によるデータ改ざんが行われた免震ゴムだった。同社製の免震ゴムが設置された全209棟のうち、建築基準法の適用から除外される重要文化財1棟を除いた153棟が建築基準法上の違反建築物となり、多くの物件では交換対応されているが、同マンションについては「関係者との協議の結果」(TOYO TIRE広報)、異例の買い取り対応となった。今後は「解体する予定」(同)という。

 これについて、ディックスクロキの社長を当時務めていた黒木透氏は、「改ざんに驚いたことは記憶に新しいが、なぜこのマンションだけが解体されるのだろうか」と話す。同じくディックスクロキ時代に企画した09年2月竣工のディーウイング・ハーバービュータワー(現・KDXレジデンス大濠ハーバービュータワー、以下KDX大濠)の設計および施工を手がけたのは、カスタリア大濠とほぼ同じ顔ぶれで、同様にTOYO TIREの免震ゴムが使用されているからだ。KDX大濠は、ケネディクス・レジデンシャル投資法人が15年2月に取得。20年12月までに免震ゴムの交換を完了させていた。

 敷地こそ622坪と狭いKDX大濠だが、用途地域は商業地域で、容積率は400%、建ぺい率は80%と、解体が決まったカスタリア大濠よりも形式的な条件では優れているが、こちらが解体される可能性はなさそうだ。

 TOYO TIREのホームページによれば、7月末時点で154棟中150棟が交換・改修に着工しているといい、未着工は4棟。そのうち1棟はカスタリア大濠であり、そのほかの3棟でどのような対応がとられるのか気になるところだが、「個別の物件については答えられないが、引き続き責任をもって対応していく」(TOYO TIRE広報)という。

次の用途は分譲マンションか?

 解体後の土地利用については、「非公開」(TOYO TIRE広報)。同社による建替えの可能性も否定できないが、今回更地にして売却する場合、どのような活用方法が見込まれるのか考えてみよう。

 すでに述べた通り、TOYO TIREの取得価格は37億4,000万円、土地面積は1,210坪(地積)であるから、単純計算すると取得原価の坪単価は309万円となる。更地にするには建物の解体工事が必要となるが、30階建の大規模タワーマンション解体ということで、「解体費用は10億円程度かかるのではないか」(地場解体業者)との声が聞かれる。解体費が10億円だった場合の取得原価は単純計算で47億円以上、マンション取得、解体、更地で再販という流れをとる場合、再販価格の坪単価は400万円以上となるだろう。ただ、今回の取得はデータ改ざんの補償の側面が強く、売却となればTOYO TIREは原価割れもやむなしといったところだろう。

 カスタリア大濠は福岡市中央区港1丁目の1区画全体を敷地としており、この敷地の用途地域は準工業地域、容積率は200%、建ぺい率は60%だ。福岡市内で不動産開発から賃貸仲介まで手がける不動産会社の社長は、「坪200万円くらいならデベロッパーも手を出しやすいのでは。坪300万円までは取引されてもおかしくはない」といい、「敷地の広さから興味はある」と付け加えた。

   容積率は200%だが、カスタリア大濠の賃貸可能面積は3,355坪、敷地面積は1,210坪で、公開空地を設けるなど総合設計制度を活用して、容積率制限が緩和されていることがわかる。周辺には倉庫やオフィスビルもあるが、多くはマンションなどの住居だ。東に6分ほど歩けば、2月にオープンしたショッピングモール・キテラタウン福岡長浜もあり、近年では単身、ファミリー問わず住む場所としても人気のエリアとなってきた。

 次期所有者となるデベロッパーが開発するとすれば、やはり筆頭は分譲マンションだろう。隣のレジャーホテルが懸念されるとしても、土地にケチが付いたわけではないため、分譲マンションだけでなく、06年当時とは違ったアプローチでの賃貸マンション開発も検討できるはずだ。

左手前がカスタリア大濠ベイタワー、奥に見えるのがKDXレジデンス大濠ハーバービュータワー
左手前がカスタリア大濠ベイタワー、奥に見えるのがKDXレジデンス大濠ハーバービュータワー

【永上 隼人】

関連記事