天神ビジネスセンター竣工に見るこれからの「都市空間」推論(後)
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天神の玄武洞~天神BC
天神BCは17年9月に国家戦略特区の特例で航空法による建物の高さ制限が緩和されたことを受け、当初計画の地上16階・高さ約76mから、地上19階・高さ約89mに変更している。上層部はオフィスに、低層部は商業施設として使用。外装デザインは福岡県久留米市出身の重松象平氏。オフィスエントランスまでを含むアトリウム部分をピクセル上に削ることで空地をつくり、異なった2つの道路のヒューマンスケールを馴染ませていく構想だ。角が削れて氷が解けていくような、独特な角地形状をこの建築物のアイコンへ昇華させた。柱状節理(マグマが冷やされたときに生じる割れ目。体積の収縮によってみられる)を想起させるこのかたちは、ピクセルの1ピースが玄武岩と見立てられる。玄武岩といえば、福岡県民であれば糸島市の「芥屋の大門」を思い出す人もいるのではないだろうか。芥屋の大門は、兵庫県豊岡市の玄武洞、佐賀県唐津市の7つ釜と並ぶ日本三大玄武洞の1つだ。
天神BCもたとえば、ピースとピースの間から自然の苔のような生態が滲み出てくるとか、風雪に耐えたガラスサッシのフレームが経年劣化の風合いを出して緑青化し、自然の情景を演出するなどあれば、「天神の玄武洞」として認知もされていくのではと勝手に妄想してみる。デザイナーの原風景にこの文脈があったかどうかは不明だが、明治通りに突如として現れた氷山の一角か、はたまたマグマ溜まりから噴き出した玄武岩の塊か、いずれにしても自然の境地として明治通りの森とともに、福岡市大動脈沿線の新たな文脈になることを願っている。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、その後独立。現在は「教育」「デザイン」「ビジネス」をメインテーマに、福岡市で活動中。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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