2024年04月20日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』脊振古道を歩く(前)

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杉の巨木の登山道「脊振古道」

 脊振山系のなかであまり知られていない場所がある。登山道を歩くと魅力的な脊振古道である。

 佐賀県三瀬村から脊振神社を経て、脊振山頂駐車場に続く県道305号脇の標高709m地点に脊振山に続く登山道がある。

 昨年6月、「脊振の自然を愛する会」の仲間たち7人と福岡市早良区の椎原登山口から車谷へ入り矢筈峠を上り詰め、峠から佐賀県側の登山道へ再び下った。小さな沢沿いの鬱蒼(うっそう)とした山道を1時間ほど歩いて下り終えると、脊振山頂へ続く静かな登山口に届いた。

脊振古道登山口、車は入り口に止められる
脊振古道登山口、車は入り口に止められる

 そこには佐賀県神埼市が設置した大きな登山地図が立っている。案内板には「渓流に映る緑の森林の里」と書かれている。登山口周辺は草地の広い場所で、中央に大きな2つの岩がある。

 この場所で7人のメンバーはそれぞれ腰を下ろし昼食を取った。筆者は岩にシートを広げて腰を下ろし、いつものようにアンパンとコーヒーで腹を満たした。食事を終えると、仲間からお菓子が回ってきた。仲間の心遣いはあり難いものである。

 一息つき、山道へ入る。杉木立を過ぎ、沢と渡と佐賀森林管理署の大きな案内板があった。この地は植物群落保護林で杉、シデ、ブナ、カエデの宝庫と表示されていた。

脊振古道の親子杉
脊振古道の親子杉

 しばらく歩くと1本の杉の巨木が現れた。幹周り5m13cm、樹齢400年と書かれた表示板が根元に置かれていた。さらに登山道を進むにつれ、杉の巨木が登山道の左右、周辺に次々と現れた。

 奥にも杉の巨木が見える。我々は勝手に夫婦杉、親子杉、兄弟杉などと名付けた。杉の巨木のほか、欅(けやき)の巨木もある。巨木たちを左右に見ながら登山道を登り詰めると、脊振山頂駐車場へ続く県道に出た。

 登山口から歩いて50分ほどである。県道の出口付近にツルアジサイが白い花を咲かせていた。見上げるほどの花をつけた大きなツルアジサイも県道脇に見ることができた。

 古道を堪能し、県道をしばらく歩く。気象レーダーへ続く林道を10分ほど歩いて矢筈峠へ戻る。林道の左右はブナ、アカガシ、ミツバツツジ、クヌギ、リョウブなどの森になっている。

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 春から夏にかけて種々の花を楽しめ、自然観察ができる道である。林道の下りカーブを2回曲がると矢筈峠に届く。ここから午前中に登ってきた車谷を下り、椎原登山口へ向かった。そして我々は勝手に、杉の巨木の登山道を「脊振古道」と名付けた。

昨年出会った大杉の幹周りを計測

 今月4日、この脊振古道を歩いてみた。紅葉の時期であり、静かな山道を無性に歩きたくなったのである。早良区の板谷峠―板谷集落―自衛隊道路を経て、佐賀県の県道305号を10分ほど下ると脊振古道の登山口へ着いた。登山者のための駐車スペースがある。ほかの登山者に配慮し車を止める。

 県道脇にあり、ガードレールで囲まれ、3~4台ほど車を駐車できる場所となっている。新しく購入した動画撮影用小型カメラ「ゴープロ」を一脚に固定する。午前9時30分、登山開始。片手にゴープロを持ち撮影しながら山道へ入る。

 植林されたきれいな杉並木に朝日が漏れてくる。11月であるが秋の静かな山道は暖かく、歩くにつれアノラックを着込んだ体は汗ばんできた。やがて脊振山方面から流れてくる沢に出る。幅5mほどの沢を渡ると岩の多い山道となった。

 登山靴を岩の上に持ち上げ足を踏みしめる。「よっこらしょ」と声が出そうであった。しばらく進むと1本の杉の巨木が現れた。昨年、出会った大杉である。

 持参したメジャーで幹周りを計測してみた。メジャーの端をピンで止め、杉を一周りする。計測値は5m21cmだった。表示板に書かれた5m13cmよりも8cm大きかった。持参したノートに記録する。ノートは昨年、ブナ林調査を行ったときのものである。巨木には、大杉と書かれた長さ50cmほどの白い表示板が置かれている。

 やがて賑やかな声で登ってくる女性の3人組がやってきた。3人組と杉を背景に動画を撮影し続けた。あとを追うと、ちょうど親子杉のところで休憩していた。彼女たちも暑くなったのか、体温調整のためウエアを1枚脱いでいた。ここで見上げるポーズをお願いして撮影した。そして、また彼女たちの後ろ姿を追った。

(つづく)

2021年11月9日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

(後)

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