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2021年11月22日 06:00

『競争と情報』~未来予測力と危機管理力の強化~(6)

日本ビジネスインテリジェンス協会会長
日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科講師
東京経済大学経営学部・大学院経営学研究科元教授

中川 十郎 氏

続・情報管理と機密保持

セキュリティ イメージ 経済情報戦に備え、米国はグローバルビジネス競争に勝ち抜くには情報の機密保持が最重要だとして96年に厳しい罰則を盛り込んだ有名な経済スパイ法(Economic Espionage Act-EEA)を制定。IT・バイオ競争時代を制し、国際競争優位の源泉となる知的所有権の保護、機密保持作戦、いわゆるプロパテント戦略を策定した。

 この法律の目玉は外国のために経済スパイの罪を犯した者には罰金50万ドル(約5,000万円=1ドル100円で換算)、懲役15年。企業、組織には1,000万ドル(約10億円)の厳罰を科すというものである。我が国の化学者が関与したという嫌疑が掛けられた2001年5月の米クリーブランドクリニック研究所のアルツハイマー病研究試料事件はこの法律が適用され、日本人研究者が逮捕、起訴された。

 本経済スパイ法の対象となる分野は企業機密、先端技術、特許、パテント、知的所有権、IT, ソフト、映像など非常に広範囲におよんでいるので、米国での情報収集にあたっては万全の注意をし、慎重に対応することが肝要だ。

 一方、我が国も対抗策として米国同様、厳しい経済情報機密保持法を制定し、我が国の知財のグローバル競争優位を確保する知識情報戦略の確立が切望される。

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 1940年代以降、長年にわたり稼動している米、英、加、豪、ニュージーランドのアングロサクソン5カ国のグローバル情報盗聴システム「エシュロン」(Echelon)~「はしご」を意味する暗号~は近年、軍事情報のみならず、経済情報の収集にも従事しているとして欧州議会でその非合法性が問題視されたほどである。この報告書によると、日本関係では96年に米国製乗用車の対日クオータ交渉に際し、CIAが当時の通産省のコンピューターシステムに侵入し、取得した情報を米通商代表のミッキー・カンターに流したケース。日本製高級車の排ガス規制の機密情報を傍受するなど、米国が情報を不正に入手したというダンカン・キャンベル氏の驚くべき調査結果を公表している。

 本報告は世界で行われている経済諜報戦の実態を白日の下にあばき出したものだ。

 我が国としては、このような激烈な経済情報戦の現状を十分認識し、高度経済機密情報の保護、保全に国家、企業とも格段の努力をすることが切望される。

 よって、我が国政府機関ならびに企業は重要な国際交渉案件や国際ビジネス商談に際しては交信が盗聴されていることを認識し、Eメール、電話、携帯、ファクシミリなどでの交信においては最善の注意を払うことに加え、重要案件や商談ではCodeを活用し、暗号を使うなど、機密保持に万全の備えを固めること。さらに組織、企業の法務、監査部門を強化するなど重要情報の機密保持に一段と注意することが肝心である。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒後、ニチメン(現・双日)入社。海外8カ国に20年駐在。業務本部米州部長補佐、開発企画担当部長、米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部・大学院教授などを経て、現在、名古屋市立大学特任教授、大連外国語大学客員教授。日本ビジネスインテリジェンス協会理事長、国際アジア共同体学会顧問、中国競争情報協会国際顧問など。著書・訳書『CIA流戦略情報読本』(ダイヤモンド社)、『成功企業のIT戦略』(日経BP)、『知識情報戦略』(税務経理協会)、『国際経営戦略』(同文館)など多数。

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