2024年04月25日( 木 )

中国経済新聞に学ぶ~中国はなぜ不動産税を徴収するのか(前)

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 中国第13期全国人民代表大会常務委員会第31回会議は10月23日、国務院に権限を授与して一部地域で不動産税の改革テスト事業を展開することを決定した。

不動産税をなぜ徴収するのか?

蘇州市 イメージ 中国で、不動産税が導入された大きな理由は、地方政府の収入が大幅に減って債務負担が重くなったからである。

 税収の配分割合は、2000年以降、概ね国が60%、省が15%、市や県が25%となっている。ただし消費税、所得税の利息税、車両購入税などはすべて国の収入になり、数が最も多い増値税も75%が国のものとなる。

 経済的に発達している江蘇省蘇州市の場合、配分割合は名目上25%となっているが、実際には全部合わせて20%に満たず、政府の定めた「内陸貧困地域への支援をする沿海発達地域」の対象であることから、実際の税収割合は18%未満である。

 この18%から、公務員の賃金のほか、市民の福祉関連、都市整備、教育や医療、住宅の確保、交通輸送などを賄わなければならず、財政的にもう何年も赤字続きである。経済成長に向けて都市整備をしている地方では赤字が慢性化し、債務が膨らむ一方である。

 地方政府はこれまで、土地の売却により税収の不足分を補っており、北京、上海などではこの部分が収入全体の半分以上に達し、「土地財政」という状態になっていた。さらにこの収入をさらに増やすために競売を繰り返して地価をつり上げ、この結果、不動産価格が値上がりしていった。政府は不動産市場で一番得をすることになり、逆に市民はローン地獄にあえぐ「房奴」になってしまった。

 6年前に習近平主席が、「家は住むもので、投機の対象ではない」と述べ、不動産価格を抑え、国民には別の所でお金を使うように求めた。しかし、地方政府が土地による収入増という恩恵を味わってしまったことから、この目標は果たされていなかった。

 そこで政府は2020年に、地方政府における土地売却の収入はすべて国のものとする策を打ち出した。この結果、地方政府は最大の収入源を絶たれてしまい、東北部では給料が何カ月も払えなくなる地域が出るなど、場所によっては深刻な財政危機に陥っている。

 よって地方政府は、税収の配分割合を現在の25%から30%に引き上げるように求めたが、国の収入も今、成長率がこれまでの18%から6%に落ち込む状態となっている。

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 そこで、国・地方の両者における財源不足を補う切り札として、不動産税を導入するに至った。現在、不動産税が先行導入されている重慶市のデータを見ると、2LDKのマンションの場合、初回購入なら年間で9752元(約17万4,490円)かかり、購入が2回目以降の場合は一戸あたり年間2万863元(約37万3,296円)もかかる。

 この不動産税は全世帯にかかわるものであり、また税収分は国と地方で折半となる可能性が高いことから、地方政府はやる気満々であり、土地売却の減少による収入減も補えることになる。

(つづく)


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