2024年04月19日( 金 )

「住宅イノベーション」の拠点開設、東大と積水ハウスがデジタル技術の普及図る

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教育・技術・保管の3要素

東京大学特別教授 名誉教授 隈 研吾 氏
東京大学特別教授 名誉教授 隈 研吾 氏

 T-BOXは、国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの3つの役割を担っている。

 国際デザインスタジオでは、KUMA LABディレクターのセン・クアン氏(東京大学特任准教授)と平野利樹氏(同大学特任講師)が世界から招聘した、著名建築家が指導にあたる。21年度春学期にはスペイン・マドリードと米・ボストンを拠点に活動するアンサンブル・スタジオと、米・ロサンゼルスを拠点に活動するアンドリュー・コバック氏がデザインスタジオを指導した。

 デジタルファブリケーションセンターでは、「人と自然の共生」をテーマに、デジタルファブリケーションの活用によって生み出される建築が、そのなかで過ごす人々の人間性豊かな生活にいかに貢献できるかを実践的に研究する。デジタルファブリケーションとは、3Dプリンターなどに代表される、デジタルデータを基にものづくりを行う技術のこと。T-BOX内に設置された最先端の設備は、建築学科内外からアクセスでき、デジタルテクノロジーについての人材育成に活用する。

 デジタルアーカイブセンターでは、建築アーカイビング(保存・記録)の手法・思想に関する研究および実践、日本が世界に誇る建築資料のアーカイビングなどを主軸とした研究・教育拠点の構築を目指す。建築家の図面や模型などの資料をデジタル化し、国内外の研究者がアクセスできるようなアーカイブプラットフォームの構築に取り組むことで、国際的な建築史研究・教育ネットワークの構築への貢献が期待されている。アーカイブ環境の充実によって、持続可能で豊かな都市環境を生み出すための既存の建築物の活用方法を、より実践的に探求する研究・教育プログラムの構築が可能になるとしている。

 壁面展示ボックス「K-BOX」には、隈研吾氏の作品として山手線・高輪ゲートウェイ駅の模型のほか、建築の新たな可能性を探るため、多様な素材を加工・製造する過程でつくられたモックアップが展示されている。他にも、同氏をはじめ講師や学生の作品も展示されており、作品は随時、追加される。

 国際アドバイザーには、コロンビア大学美術史学専攻マイヤー・シャピロ講座教授のバリー・バーグドール氏、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)学部長のサラ・M・ホワイティング氏、佐々木氏を迎え、錚々たる顔ぶれとなっている。

 隈氏は記者会見で、「建築はアナログの極地だと思われがちだが、まさに“今”、デジタルテクノロジーが建築のなかにも入ってきている。それを学生に教えることが最大の目的であり、そのための設備、人材、そしてアーカイブ機能がここにはそろっている」とコメント。T-BOXの可能性と必要性を説いた。

【麓 由哉】

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