2022年01月20日( 木 )
by データ・マックス

【常勝企業がなぜ負けた(1)】JR東海、リニア中央新幹線工事でトラブル続出(中)

 東海旅客鉄道(株)(JR東海)で、リニア中央新幹線の工事トラブルが続出しており、2027年とされる東京・品川~名古屋間の開業は一段と厳しくなった。東海道新幹線というドル箱路線を持ち、快走していたJR東海だが、社運を賭けたリニア中央新幹線が「疫病神」に見舞われた。

県議会は川勝知事の辞職勧告決議案を可決

 川勝知事は軽口を叩くのがお好きなようで、それを捉えて自民党が巻き返しに出た。

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 川勝知事が10月に行われた参院静岡選挙区補欠選挙で、野党系の応援演説に立った際、対立候補の地盤である御殿場をやゆする「コシヒカリ発言」があったとして、県議会は11月24日、臨時議会を開き、知事に対する辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。

 最大会派の自民改革会議は、法的拘束力のある不信任決議案の提出を検討したが、可決が難しいとみて辞職勧告決議案に切り替えたと報じられた。知事選の再選挙に持ち込み、リニア工事賛成の知事を当選させることを狙ったものだ。だが、辞職勧告では法的拘束力はなく、川勝知事は続投を表明した。

参院補欠選挙、リニア反対候補者が当選

 「コシヒカリ」発言とは、どういったものか。地元静岡新聞(12月5日付)は、川勝知事が10月23日に浜松市で行った参院補欠選挙での野党系の山崎真之輔氏に対する応援演説の全文を掲載した。対立候補は、自民新顔の前御殿場市長・若林洋平氏。

 〈こちら(浜松)は食材の数も430のうち3分の2以上ある。あちら(御殿場)はコシヒカリしかない。ただ飯だけ食って、それで農業だと思っている。こちらにはウナギがある。シラスもある。三ケ日みかんもある。肉もある。野菜もある。タマネギもある。なんでもある。もちろんギョーザもある〉

 当然、御殿場は怒るだろう。川勝知事は「コシヒカリ」発言の謝罪に追い込まれた。

 川勝知事が応援した山崎氏は65万票(47.5%)、それに対して、リニア推進の若林氏は60万票(44.0%)で、5万票の差をつけた。リニア反対の共産党候補者も11万票(8.5%)を獲得し、野党系で自民党を圧倒。これにより、改めて争点となったリニア問題について、静岡県民がJR東海にノーを突き付けたかたちとなった。

リニア推進の葛西名誉会長、取締役退任

リニア中央新幹線 イメージ    JR東海の葛西敬之取締役名誉会長が20年6月23日の定時株主総会で取締役を退任した。葛西氏が取締役から退くのは1987年の会社発足以降初めて。33年余りで退くことになった。名誉会長の職は続ける。

 葛西氏は1963年、旧国鉄に入社。後にJR東日本(株)社長となった松田昌士氏、JR西日本(株)社長を務めた井手正敬氏とともに、国鉄改革「3人組」の1人として知られる。95年に社長、2004年から会長を務め、14年に名誉会長に退き、18年には代表権を外れた。

 今回、取締役の退任により、JR東海の「葛西時代」が終焉した。在任中の最大の事績は、27年の開業を目指しリニア中央新幹線の準備を進めてきたことである。

 リニア工事をめぐり、静岡県知事と激しく対立してきたため、退任することで、県知事との交渉を進展させようとの意図が透けてみえる。

安倍晋三を支えた男、葛西敬之氏

 葛西氏は安倍晋三元首相に近い経済人として知られる。安倍首相(当時)の首相動静によると、20年1月17日、東京・平河町の日本料理店「下関春帆楼東京店」で、葛西敬之JR東海名誉会長、古森重隆・富士フイルムホールディングス(株)会長、ジャーナリストの櫻井よしこさんと会食している。3月31日には、官邸で葛西氏と会った。

 葛西氏は、親米保守派の論客として、首相の右派人脈につらなる人物だ。

 日本最大の右派団体である日本会議の幹部と顔ぶれが重なる「美しい日本の憲法をつくる国民の会」では、代表発起人に名を連ねた。また、安倍首相が第1次政権時代に肝いりでつくった「教育再生会議」のメンバーを務めた。

 葛西氏は、安倍氏が首相に就任する前から、大企業のトップでつくる親睦会「四季の会」をつくり、安倍氏を支えてきた。その中心メンバーが葛西氏と富士フイルムHDの古森氏である。

 「四季の会」はNHK(日本放送協会)の人事権を掌握している。NHKが反政権の世論に加担するのを防ぐのが狙いだ。第1次安倍政権の発足以来、NHKの経営委員会委員長や会長は、葛西氏と古森氏が仕切ったとされる。NHKの会長に就任した元(株)みずほフィナンシャルグループ元会長・前田晃伸氏も四季の会のメンバーだった。

(つづく)

【森村 和男】

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