2022年06月30日( 木 )
by データ・マックス

2024年大統領選に影を落とす米中対立の行方(前)

国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

敵を味方に変える「トランプ砲」の威力

 アメリカでは2022年に中間選挙が予定され、その後、2024年には4年に1度の大統領選挙を迎えます。現職のバイデン(79歳)氏が再選を勝ち取るのか、はたまたトランプ前大統領(75歳)の復活があり得るのか?世界が注目するアメリカの政局ですが、何と言っても話題の中心はトランプ前大統領です。昔も今も、相変わらず言いたい放題、やりたい放題を続けています。

ホワイトハウス イメージ   最近も「ニューヨーク・タイムズ」紙の看板記者・マイケル・ウルフ氏をフロリダ州の豪華な自宅兼会員制クラブ「マール・ア・ラゴ」に招き、思いのたけをぶちまけました。ウルフ氏といえば、これまでトランプ氏の大統領時代の悪行三昧を暴露した2冊のベストセラーの著者として知られています。

 普通なら、自分に批判的な記者をわざわざ招くようなことはありません。しかし、トランプ氏は普通ではありえないことを平気でやってしまうのが持ち味です。「あの記者は気に入らないが、見どころがある」と判断し、フロリダに招き、6時間にわたってインタビューに応じているのです。

 最も衝撃だったのは、次の発言です。「おんぼろバイデンはアルツハイマー病を患っている。そのため任期中に死亡するはずだ。間違いない。2024年の大統領選挙ではカマラ・ハリスと俺の戦いになるだろう。俺が圧勝するね。これでホワイトハウスの奪還劇が完了するってわけだ」。

 とてもまともな政治家の発言とは思えませんが、そこまでいうのがトランプ流というわけです。実は、「フォーブス」誌恒例の「アメリカ長者番付」から過去25年で初めて名前が消えたのがトランプ氏でした。長者番付上位400人から外れたことで、トランプ氏は相当頭にきているようです。

 そのため、「フォーブス」誌に対しても「あいつらは俺の資産評価を間違えている。先の大統領選挙で俺の票を数え間違えたのと同じだ」と怒り散らしています。コロナ禍の影響で不動産や観光業が大きなダメージを受けており、トランプ氏の所有するホテルやゴルフ場も赤字転落してしまい、資産価値が急落しているのは当然のことです。

 しかし、そんな不都合な真実は絶対に認めないのがトランプ流に他なりません。ウルフ記者のコメントが振るっています。曰く「トランプ氏は別世界に生きているようだ。我々の見る現実と彼の見る現実はまったく違っている」。

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 とはいえ、じっくりと話し合った結果、「長年の友人のような気持ちにさせられた」とも告白しているのです。これこそ、敵を味方に変える「トランプ砲」の威力かもしれません。いずれにしても、2024年アメリカの大統領選挙で大きな争点になるのは、国内では景気対策であり、外交面では対中政策になることが確実視されています。

「台湾有事」発展の危険性

 その点でいえば、中国問題が両氏の命運を左右する可能性が大きいと思われます。なぜなら、バイデン、トランプ両氏にとって中国の動向は経済、安全保障の両面から無視できない要因となっているからです。中国が台湾に武力攻撃を仕掛け、長年の夢である「台湾統一」を実現しようとすれば、それは即「台湾有事」に発展する危険性を孕んでいます。

 万が一、台湾有事となれば、それは「日本有事」に直結するわけで、日本としても傍観することはあり得ない話になります。日本とすれば、米中の緊張が取り返しのつかない熱戦に推移しないよう、両国への働きかけを強めるべきと思われます。

 アメリカがどこまで台湾有事に関与するのか不明ですが、中国の台頭を最も危険視するバイデン政権はトランプ政権時代より、インド、オーストラリア、日本などアジアの同盟国に加え、英国やフランス、オランダなどヨーロッパ勢も巻き込んでの「中国包囲網」の形成に余念がありません。

 万が一、台湾海峡で戦火が交わる事態になれば、日本にとっては海上輸送路が遮断されることになり、石油や半導体などの輸入は7割から8割は途絶えるとの試算もあるほどです。
まさに、日本にとっても「有事」となります。岸田政権ではアメリカと連携して中国の動きをけん制する考えのようですが、冷静な判断と柔軟な対応が欠かせません。

 なぜなら、中国が台湾の防衛識別圏内への飛来回数を急速に拡大するようになった背景には、アメリカとイギリスがオーストラリアへの原子力潜水艦技術の移転を決めたことも大きく影響しているからです。アメリカが虎の子の原潜建造技術を外国に提供するのは1950年代以来初のことで、核拡散防止条約に違反するとの批判もあります。

 しかも、その狙いは「中国の脅威に対抗するため」となれば、中国もそれなりの対抗姿勢を示さざるを得ないことになるでしょう。折しも、アメリカはCIAに新たに「チャイナ・ミッション・センター」を立ち上げ、中国との敵対的姿勢を内外にアピールし始めました。

(つづく)


浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。

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