2024年03月30日( 土 )

“設計思考”で構想する唐人町の未来図、焼き芋できる「立体キャンプ場」案(前)

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先人たちの都市計画を、用途地域から読み解く

 「唐人町」は、福岡市の中心・天神から2.3km西に位置し、福岡市地下鉄で天神駅から6分、博多駅からは11分と都心部に隣接する地域でありながら、街中の公園や校庭では日中、小学生や幼稚園児が入り交じって遊んでいる。道路一本挟んだ反対側にはセントラルパーク・大濠公園があり、ランニングを楽しむ老若男女の姿が見られる。この土地に住む「土の民(つちのたみ)」だ。唐人町駅界隈は古い民家も多く、昔からの居住者、またその子どもたち・孫たち世代へ変わりつつもある。一方では、まとまった広さの再開発で大規模マンションへと変貌したところも見られるようになって、新旧が一体となった不思議な風情も残る。イベントやコンサート、野球観戦など、PayPayドームや商業施設(MARK IS 福岡ももち等)を利用する、外からやって来る「風の民(かぜのたみ)」たちの大半は、この土地を横切るだけ。残念ながら素通り状態で、そのまま帰路に就く。

 さて、この古き良き風情が残る界隈の用途地域を読み解いてみよう。不動産・建築業界で使われる「用途地域」という言葉は、あまり一般の人たちには馴染みがないかもしれないが、街を創っていく(もしくは建物を建てる)ときには、必ず照らし合わせなければならない絶対照合の手順だ。簡単にいうと、決められた地域内には決められた用途のもの以外は建てられないという建築上のルールだ。

 商業エリア~住居エリアを細かく刻んで区分けしていくのだが(今回はテーマ上、工業エリアは除く)、ざっくりいうと都市部の主要駅を中心とする商業エリアが高層・高密度化されたビル群で固められていて、そこから郊外の住居エリアに向かって低層・低密度化していくといった都市計画の手法だ。居住空間は日照や空地を有する環境を確保するため、商業はそれらに反しても収益化を求める環境を優先する、といったところだろうか。用途地域マップなどはインターネットから誰でも知ることができるので、自分の住むエリアをその視点で見てみるのも面白いだろう。

中央区の用途地域
中央区の用途地域

 唐人町駅周辺の明治通り沿いは「商業地域」で、PayPayドームやMARK IS 福岡ももちエリアも「商業地域」だ。その間に挟まれている唐人町界隈は「第一種住居地域」に、その周辺を取り囲む幹線道路A(よかトピア通り、黒門川通り、地行~鳥飼沿線の3路線)沿いが「第二種住居地域」になっている(第一種のほうが住居環境を守る規制が強くなる)。

 広域視点でいうと、明治通りから南側の大濠・今川エリア、北側の福浜・西公園エリア、西側の地行浜エリアがそれぞれ「第一種住居地域」で、そのなかに「第一種中高層住居専用地域」が点在している。明治通り沿いの商業地域エリアは、天神界隈が広域にわたって分布されるのに対して、西に向かっていくほど先細りしていく具合だ。このように商業や住居の密度をコントロールして、街は創られている。


<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
松岡 秀樹 氏1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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