“設計思考”で構想する唐人町の未来図、焼き芋できる「立体キャンプ場」案(前)
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軽薄短小的わき道で、断絶した商業の人流
よかトピア通り沿いはかつての海岸線であり、そこから北側は海だった。1989年に開催されたアジア太平洋博覧会のためにつくられた埋立地であり、自然発生的に拡がる都市群ではなく、後発に興った人工商業地だ。通常、幹線道路沿いに進むと同等粒度のビル群を臨むことになるが、そこから90度折れ曲がり進むと、“密”から“疎”に向かって街の密度は緩やかに低下していくのが通例だ。唐人町駅からPayPayドームへ向かう道中もまた御多分に漏れず、断続的と言わざるを得ない“軽薄短小的わき道”といえる。
随分と平素な住宅街を抜けていくものだな、と県外から初めて福岡へ来た人は感じることだろう。野球界を代表する強豪チームの本拠地にしては、随分とぜい弱ではないかとさえ思うかもしれない。それは、その道がかつての海に開ける手前の、扇状地沿いの小川に他ならないからだ。ソフトバンクの本拠地であるPayPayドーム界隈は、後からつくられた歴史の浅い商業エリアで、立地上ポツンと孤立している。また、人流の終着地のようになっていてそこから連続した環流をつくることが難しく、あくまで一過性のイベントや野球観戦のための箱もの開発に終着している感が強い。主要な玄関口である博多駅や天神駅を中継してやって来るゲストたちは、商業粒度の高い街からやって来るために、人流が断絶し“開疎化”されていくその風景に、否応にも商業の熱気は冷まされていくのだ。
もしかすると先述の幹線道路Aに囲われた区画内部は商業地域として再編成し、天神界隈からの商業エリアの潮流を連続的に増幅させる手法など取れないものだろうか、と勝手に企んでみたりするのだが・・・。
“こども病院跡地”はその道すがら、必ず横目に眺めることになる場所にある。ちょうど唐人町駅とMARK IS 福岡ももちの中間くらいの交差点にあたる。ここはゲストが通過していく場所であるが、風の民のみならず土の民も行き来することの多い生活道路沿線だ。交流の場、滞在の場、生活の場として、コレクティブなコミュニティ空間をここの場所につくれないだろうか。“商業地域”と“商業地域”の狭間にあるこの中継地を、風の民、土の民が気軽に立ち寄れるような場所として、生まれ変わらせることはできないだろうか――と思案してみた。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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