駅の東西で性格異なる「吉塚」というまち
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まちの発展を推進した「商業」
吉塚一帯は、もともとは田畑が広がる地帯だった。1926(大正15)年ごろの地図を見てみると、早くから整備が進んでいた博多・天神エリアと違い、吉塚駅こそあるものの、ほとんどが田畑に囲まれている。しかし現在では田畑があった形跡はなく、住宅街ばかり。現地を歩いてみると、県道607号付近は新しいマンションが多く立ち並んでいるものの、吉塚1~5、8丁目は3階程度の低い戸建住居やアパートばかりと、区域によって印象は異なる。
また、「吉塚市場」をはじめとして、小さな店舗がところどころに点在する。現在は大手のスーパーマーケットやコンビニエンスストアが進出したこともあり、その数は減ったというが、このまちで商業が軸となっていたことは感じ取れる。
まちの風景からも、商業が発展のカギとなったことが読み取れるほか、福岡の有名企業の創業の地として吉塚の名前が見られることも多い。
以下、商業を共通項にした代表例5つを挙げてみる。バス停「道頓堀」
吉塚6丁目には「道頓堀」という名前のバス停が存在する。これは昭和初期、まだ田畑の広がる吉塚のまちに商店が開業し始めたころ、地域の活性化を目的に命名されたという。いうまでもなく、この名前は大阪の繁華街・道頓堀が基になっており、現在もこうしてこの名前を確認することができる。
十日恵比須神社
毎年1月に行われる正月大祭には、多くの参拝客が訪れる。大黒天、恵比寿天が祀られ、商売繁盛、家内安全、交通安全、漁業繁栄、縁結びのご利益があるとされており、経営者などのビジネスパーソンをはじめ、福岡県民に広く愛されている。
トリゼン
「華味鳥」「糸島華豚」のブランドで有名なトリゼングループ。1949年、鶏肉小売業を吉塚市場に開業し、62年には水たき屋「とり善」もオープン。このような食肉卸・製造・販売や飲食・通販事業に加え、近年では海洋環境を鶏の力で救うことをテーマにしたトリゼンオーシャンズ(株)も立ち上げるなど、福岡の地から地球環境の改善に取り組んでいる。
吉塚うなぎ
中洲の名店として名を馳せる同店は吉塚で創業した。1873年、徳安新助氏がうなぎ料理の専門店として吉塚で創業したのが始まり。こだわりの製法を用いて焼き上げるうなぎの味は瞬く間に人気を集め、福岡のみならず、全国から数々の著名人が訪れることも有名だ。1953年に現在の中洲に移転し、現在に至るまで強く支持されてきた。
石蔵酒造(通称:博多百年蔵)
創業は江戸時代後期。黒田官兵衛・長政親子が筑前福岡藩主となる際、播州播磨から共に博多に足を踏み入れた。もともと博多~壱岐・対馬間で海運業を営んでいたため、酒造を手がけるようになったのは江戸時代後期から。また、現在使われている酒蔵は1870(明治3)年に第2酒蔵として作られたものであり、すでに151年が経過している。2011年1月には国の登録有形文化財となり、再現の難しい歴史的な建造物として文化庁からも認められた。酒造としてだけでなく、披露宴やコンサート会場としても使用されており、酒の販売はもちろん、この趣ある空間まで人々に愛されている。
【杉町 彩紗】
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