減築をデザインする時代|再開発から見る「都市と建築」(2)
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再開発の目的は、高度利用から低度利用へ
では、再開発とは何であろうか。日本の再開発に関する優れた通史である「日本の都市再開発史」では、広義の定義を「既成市街地における、インフラ、防災、住環境、土地利用更新、都市機能高度化、都市構造改編、経済開発」として、建築のみならず土地区画整理事業も扱っている。つまり、再開発とは既存の建物の減築と新たな開発のセットであると理解できる。そして、そのことに再開発を通して建築と都市を考えることの特色があるだろう。建築だけを考える際、そこに減築のことは含まれない。しかし今、減築をデザインする時代が来ている。人口減少や自然災害の頻発といった困難と共存していくためには、減築を通して都市の形態を変えていくことが不可避だからである。
今後、詳しく触れることになるだろうが、江戸時代から20世紀後半にわたって、再開発の目的は防災から高度利用へと移り変わってきた。1950(昭和25)年に建築基準法が施行されたとき、全国の都市不燃化は新築の建物が担うこととなった。69(昭和44)年に施行された都市再開発法の主な目的は、都市空間の高度利用であり、防災ではなかった。
しかし、それからおよそ半世紀後にコロナ禍となり、人が密集するだけで災害となることがわかった。高度利用にひた走った再開発もまた、災害からは自由ではなかった。たび重なる災害で、都市の輪郭は変わらざるを得なくなっている。福島では現在も、市街地でありながら立ち入りできない区域がある。陸前高田では沿岸部の街のかたちが、まるきり変化した。今、人の住める領域が、都市の内側と外側から変化しようとしている。都市が再び防災に向き合い、縮小を受け入れ、密を避けて低度利用を促し、既存の空間の再利用へと舵を切ろうとしているとき、再開発の目的も自ずと変わろうとしている。
建築的には、戦前から再開発の主役はコンクリートの建物であった。大学でも工学部建築学科ではコンクリート構造のみが教えられ、木構造は農学部の管轄であった。大工普請は厚生労働省の管轄だからである。それは、都市計画的な再開発ビルはコンクリートで建設することを意味した。
しかし今、大規模ビルも木造で建設できる未来が来ようとしている。今日の建築学科で最も新鮮な話題は、木造である。建築雑誌をめくれば、木造の新築建物ばかりが紹介される時代となった。
<プロフィール>
角 玲緒那(すみ・れおな)
1985年北海道生まれ、札幌市立高等専門学校、九州大学21世紀プログラム、九州大学芸術工学府博士後期課程単位取得退学。専門は建築。現在は歴史的建造物の保存修復に従事する。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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