2024年05月04日( 土 )

減築をデザインする時代|再開発から見る「都市と建築」(2)

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ハイラインに見る不動産価値の向上

ニューヨークで鉄道高架跡を公園としたハイライン・プロジェクト(筆者撮影)
ニューヨークで鉄道高架跡を公園とした
ハイライン・プロジェクト(筆者撮影)

    つまり今、都市は平面的にも立面的にも、その様相を変えようとしている。再開発について考えるとは、この都市の様相が変わりつつある大きな変化の局面に立ち会うこととなるだろう。これからの再開発とは何なのか、枠組みを外して考えなければならない問題である。

ニューヨークで鉄道高架跡を公園としたハイライン・プロジェクト(筆者撮影)
ニューヨークで鉄道高架跡を公園とした
ハイライン・プロジェクト(筆者撮影)

    そこで本連載では、ただフロアを増やすだけではない、既存都市の減築・低利用化も取り上げながら、建築のデザインまで考えていきたい。今最もホットな再開発とは、高度利用ではもうなくなってきている。自ずと、都市を自然環境に再び還すような開発行為も取り上げるだろう。

 ニューヨークでは鉄道の高架跡に建物を建てずに植栽を施し、コミュニティにもサステナビリティにも貢献しながら、不動産価値を高めている事例がある。日本でも東京駅丸の内駅舎復元のように、使えるはずの容積率を譲渡して街区全体で価値を高める事例が一般的になってきた。他にもソフトではあるが街区の再定義には有効なエリアマネジメントといった手法もある。こういった国内外の事例を横断しながら考えていきたい。

 再び都市の定義に戻るならば、これまでの再開発は「都市」化の顕著な事例であった。交流人口の層を増やし、人数を増やすことが目指すべき姿であった。しかし、今後来るべき低度利用・再利用の再開発は、都市を「村」へと戻すのか。もしくは再開発への木造の導入は「村」的な景観を招くのか。それとも「都市」でも「村」でもないものが出現するのか――。自ずと、都市と村の定義に揺さぶりをかけることとなるだろう。

(了)

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再開発から見る「都市と建築」(1)天神ビッグバンによる再開発の新フェーズ


<プロフィール>
角 玲緒那 氏角 玲緒那
(すみ・れおな)
1985年北海道生まれ、札幌市立高等専門学校、九州大学21世紀プログラム、九州大学芸術工学府博士後期課程単位取得退学。専門は建築。現在は歴史的建造物の保存修復に従事する。

再開発から見る
「都市と建築」(3)

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