2024年04月14日( 日 )

既存メディアの衰退と新メディアの台頭について(7)

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『週刊現代』元編集長
元木 昌彦 氏
ビデオニュース・ドットコム代表
神保 哲生 氏

 この国のマスメディアの腐敗は確実に、深く進行していて、もはや後戻りのできないところまできてしまっていると、思わざるを得ない。東京五輪のスポンサーに朝日新聞を始め、多くのマスメディアがこぞってなったとき、ジャーナリズムとして超えてはいけない“ルビコン”をわたってしまったのである。その後も、NHKの字幕改ざん、読売新聞が大阪府と包括協定を結ぶなど、ジャーナリズムの原則を自ら放棄してしまったと思われる出来事が続いた。
 神保哲生さんは、そんななかで、希少生物とでもいえる本物のジャーナリストである。彼が「ビデオニュース」社を立ち上げた時からのお付き合いだが、時代を射抜く目はますます鋭く、的確になっている。神保さんに、マスメディアの現状とこれからを聞いてみた。

(元木 昌彦)

左から、『週刊現代』元編集長 元木昌彦氏、ビデオニュース・ドットコム代表 神保哲生氏
左から、『週刊現代』元編集長 元木昌彦氏、
ビデオニュース・ドットコム代表 神保哲生氏

不平等条約である日米地位協定の問題

『週刊現代』元編集長 元木 昌彦 氏
『週刊現代』元編集長
元木 昌彦 氏

    元木 1月23日の名護市長選では、現職の渡具知武豊氏が大勝しました。事前の調査では、接戦または現職に有利と報道されていましたが、オミクロン株が米軍基地から広がったため、投票行動に変化があるかなと期待していたのですが。

 基地内でクラスターが発生しているのに、岸田政権は基地の外に出るなとはいえず、広がってから、おずおずと申し入れをしました。その時も不平等条約である日米地位協定の問題がクローズアップされましたが、本土のメディアは大きく取り上げなかったですね。

 神保 米軍が駐留している世界の他の国を見ても、日米地位協定ほど奴隷的な地位に甘んじているのは日本だけです。昨年12月に米国で有機フッ素化合物の一種である「PFOA/PFOS」の健康被害を描いた『ダークウォーターズ 巨大企業が恐れた男』が日本でも公開されましたが、沖縄の嘉手納や東京の横田、青森県の三沢などの米軍基地から消火剤に使われる「PFOA/PFOS」が地下水を通じて基地の外に漏れ出し、周辺住民に影響を与えている疑いが濃厚になっているにもかかわらず、日米地位協定があるために日本政府は何もすることができません。

ビデオニュース・ドットコム代表 神保 哲生 氏
ビデオニュース・ドットコム 代表
神保 哲生 氏

    米軍基地の「PFOA/PFOS」汚染は、日本以外の国でも報告されていますが、ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏によると、韓国やホンジュラスでは地位協定が何度も更新され、環境基準も今日の法律に準拠したものになっているため、政府が米軍に対して調査を求めたり、立入り検査ができるようになっているそうです。しかし、日米地位協定だけは一度も改定されておらず、1960年に締結された地位協定の時代背景ゆえに、そもそも環境基準というものが存在しません。地位協定を廃棄しろとか、日米安保を破棄しろというような話になると大変な話になりますが、せめて地位協定の環境基準を今日の日本の環境基準に沿ったものに更新するくらいのことができない理由はありません。

 元木 アメリカ占領期以来、米軍と結ばれてきた不平等な関係を見直せと、マスメディアがいい出すべきだと思います。弱い者には居丈高になり、強い者には唯々諾々と付き従うのが、日本のメディアの特性ですからね。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】

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<プロフィール>
元木 昌彦
(もとき・まさひこ)
1945年生まれ。早稲田大学商学部卒。70年に講談社に入社。講談社で『フライデー』『週刊現代』『ウェブ現代』の編集長を歴任。2006年に講談社を退社後、市民メディア『オーマイニュース』編集長・社長。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。現在は『インターネット報道協会』代表理事。主な著書に『編集者の学校』(講談社)、『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)、『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、『現代の“見えざる手”』(人間の科学新社)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

神保 哲生(じんぼう・てつお)
1961年東京生まれ。15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信など米国報道機関の記者を経て独立。99年、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任。主なテーマは地球環境、国際政治、メディア倫理など。主な著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店)、『PC遠隔操作事件』(光文社)、『ツバル 地球温暖化に沈む国』(春秋社)、『地雷リポート』(築地書館)など。

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