2024年04月25日( 木 )

日本における深刻な人権侵害

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は技能実習生制度」の廃止を求めた2月20日付の記事を紹介する。

入国規制緩和を求める大きな理由の1つは産業界が安価な外国人労働力の利用拡大を求めていること。

中国の人権問題を批判する日本が国内の人権問題に目を向けないことはダブルスタンダードのそのもの。

最大の問題は技能実習生制度にある。

また、入管における外国人に対する対応も問題が多い。

他国の人権問題を批判することより、自国の人権問題を先に解決するのが筋だ。

安倍内閣は2018年12月に入管法を改定した。

入管法改定の目的は外国人労働力の利用拡大を図ることにあった。

しかし、大きな問題がある。

外国人労働者の人権が侵害されていること。

この問題についての抜本的な対応を示さずに、ただ、外国人労働力の利用拡大を図っただけだ。

技能実習生制度の実態は現代の奴隷労働。

https://bit.ly/3uYEodz

安価な労働力の流入増大は低賃金労働力という「商品輸入」である。

現代版の奴隷貿易制度が拡充されたようなものだ。

2018年の入管法改定当時、最大の問題とされたのは日本における人手不足だ。

特定の産業で人手不足が叫ばれていた。

この分野に外国人労働力を充当することが制度改定の狙いだった。

人手不足が見込まれる分野として、

介護、建設、農業、外食、宿泊、ビルクリーニング、産業機械製造などの業種が挙げられていた。

人手不足の原因は賃金不足。

求職者は賃金が上がれば増える。

求人に対して求職が少ないのは提示される賃金が低いから。

「人手不足」は「賃金不足」であり、賃金を引き上げれば人手不足は解消される。

日ごろ、市場原理を強調する人々が、この問題になると市場原理に触れようとしなくなる。

きつい、汚い、危険、な業種の仕事を求める人は少ない。

大変な仕事だからだ。

この分野で求職者を増やすには賃金を上げる、待遇を改善することが必要。

しかし、賃金引き上げ、待遇改善は労働コストの上昇を意味する。

これを回避するために外国人労働力を利用しようということなのだ。

外国人労働力を「人」として扱っていない。

外国人労働力を「商品」として取り扱い、その輸入急増に国を挙げて取り組んだのだ。

法改定審議に際しての厚労省の発表では2017年10月末時点での外国人労働者は127万人超。

そのうち、技能実習生として来日し、働いている外国人労働者が約25万人。

その技能実習生の就労に関して、深刻な人権侵害が起きていることが報告されていた。

技能実習生はあらかじめ就労先が決められていて、職場移転の自由が認められていない。

しかも、技能実習生は来日するまでの過程において、種々の費用として多額の債務を負担させられていることが多い。

過酷な労働環境に置かれても容易に帰国を選択することができない。

このために、技能実習生は、理不尽な雇用主の命令に従わざるを得ず、低賃金での長時間労働や、セクハラやパワハラの被害を受けている者が極めて多い。

これらの問題に何らの抜本策を講じることなく、法改定が強行された。

日本の産業界が、安価で人権に配慮しないで済む外国人労働力の活用を求めたからだ。

コロナで外国人の入国者数が激減した。

国が外国人入国者数を制限している。

これに対して、安価で人権に配慮しないで済む外国人労働力の輸入増大を資本が求めている。

このことを口にできないから、日本への留学生の要望を表向きの口実として使っているだけなのだ。

この機会に、技能実習生制度における人権問題を徹底的に論議する必要がある。

2018年の法改定審議に際して、失踪した技能実習生に対する聴取内容を記載した聴取票が公開された。

このとき、法務省が入管法改定を強行するために虚偽の報告をしていたことが明るみに出た。

開示された聴取票から明らかになったのは、外国人労働者の多数が最低賃金以下の賃金で雇用されていたこと。

2,892枚の聴取票のうち、最低賃金以下の賃金で働かされていた外国人労働者は全体の約6割、1,939人に達していたことが判明した。

法務省が22人だと説明していたものが実は1,939人だった。

法案審議の時点での過去3年間に、69名もの技能実習生が死亡していたことも明らかになった。

※続きは2月20日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「日本における深刻な人権侵害」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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