2024年04月20日( 土 )

米国は早期停戦合意成立に協力的か

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回はロシアのウクライナ侵攻に関して停戦協議を進行させ、停戦合意を確立するために関係各国が最大の努力を払うべきだと訴えた2月26日付の記事を紹介する。

 国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。

これが国際連合の考え方。

その前提に

人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおくことがある。

内政干渉しないこと。

自決の原則を尊重し、平和的手段によって紛争を解決する。

武力の行使または武力による威嚇をしないことが世界平和実現のカギを握る。

この原則が重視されなければならない。

この意味でロシアによる軍事作戦実施は許されるものでない。

しかし、同様の武力行使はほかの事例でも実行されてきたという歴史がある。

米軍によるアフガニスタンへの侵攻。

米軍によるイラクへの侵攻。

これらもまた、紛争を武力の行使によって解決しようとしたものである。

米国がロシアを非難するが、基本的にどっちもどっち。

ウクライナの政権は2014年の政変で転覆された。

暴力的革命による政権転覆である。

暴力的革命によって親ロ政権が反ロ政権に転覆させられた。

ウクライナにはウクライナ系住民とロシア系住民が併存している。

ウクライナ系住民が多数派である。

両者の対立は根深い。

従って、単純多数決で決定するとロシア系住民の意向が踏みにじられる。

ロシア系住民は東部、南部に偏在している。

2014年政変にともないウクライナ内戦が勃発した。

ドネツク州、ルガンスク州では親ロシア系勢力が優勢で、この勢力が同州主要部分を実効支配した。

これに対してウクライナ軍が攻撃し、内戦状態が生じてきた。

この内戦を停止するために2014年から2015年に「ミンスク合意」が締結された。

合意にはドネツク州、ルガンスク州に対する自治権付与の方針が定められた。

両地域に自治権が付与されれば、ウクライナのNATO加盟は実現しない。

ロシアはウクライナがNATOに加盟して対ロシア敵対姿勢を強めることを警戒している。

また、ロシア系住民がウクライナ政府から圧迫を受けることを警戒してきた。

ロシアはウクライナ政府にミンスク合意の履行を求めてきたが、合意が履行される気配さえなかった。

逆にウクライナのゼレンスキー大統領はロシアに対する対決姿勢を鮮明に示してきた。

この状況から、ロシアはドネツク、ルガンスク両地域が共和国として独立を宣言したことを受けて、これを承認し、両共和国の要請に従って、ロシア軍のウクライナ国内への特殊軍事作戦を始動させた。

ゼレンスキー大統領はコメディアン出身の大統領。

ゼレンスキー氏が出演してきた政治ドラマが大統領就任の布石になった。

この政治ドラマを放映した放送局”1+1”はCMEの放送網に属する企業。

CMEから放送局を買収したのはイスラエルに近いウクライナの財閥である。

世論をコントロールするメディアを活用して新しい大統領を創出したのであ
る。

その大統領がミンスク合意を履行しようとせず、ウクライナのNATOへの加盟を求め、対ロシア対決姿勢を強めるためにウクライナへのNATOおよび米国の軍事支援拡大を求めてきた。

実際に、米国およびNATOはウクライナに対する軍事支援を実施してきた。

こうした経緯があっての今回のロシアの行動。

中国はロシアに対して、これまでの経緯に関する理解を示した。

平和を維持するためには、価値観や立場の異なる者が対話を継続し、互いに譲歩し、着地点を見出すことが必要。

ロシアの動向を察知した米国には2つの道があった。

米国が仲介者として行動し、戦乱を未然に防ぐ対応。

もう1つは、ロシアの動向を大々的に喧伝して、軍事衝突を放置あるいは誘導すること。

結局、取られた対応は後者である。

戦乱がこれ以上拡大するのを防ぐため、早期に停戦協議を始動させることが重要だ。

米国はその先頭に立つ責務を負っている。

ロシアのプーチン大統領が強硬な軍事作戦実施を検討し始める契機になったのがウクライナの新方針提示である。

高知大学の塩原俊彦准教授が指摘している。

2021年3月25日にウクライナのゼレンスキー大統領が「軍事安全保障戦略」を承認する大統領令を出した。

これが、ロシアの対ウクライナ姿勢を転換させた契機になったと指摘している。

「軍事安全保障戦略」に、

「ロシア連邦との地政学的対決において、国際社会がウクライナを政治的、経済的、軍事的に支援すること」

と明記された。

ゼレンスキー大統領はウクライナのNATO加盟を求め、西欧諸国、米国にロシアと対決するための軍事支援を求めた。

ミンスク合意ではロシア系住民が支配する地域への自治権付与が定められた。

これを履行する気配さえ示さず、ロシアと軍事的に敵対する方針があからさまに示された。

ロシアがゼレンスキー大統領の言動に激怒するのは順当といえる。

ゼレンスキー大統領が「軍事安全保障戦略」を承認したのは2021年3月25日。

米国でバイデン新政権が発足した直後だ。

バイデン新政権で国務次官に起用されたのがヴィクトリア・ヌーランド女史。

このヌーランド女史こそ、2014年のウクライナ暴力革命の影の主役と見られる人物だ。
※続きは2月26日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「米国は早期停戦合意成立に協力的か」で。


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