かしいかえん跡は何ができる?跡地利用考察(後)
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香椎花園のレガシーを継承した、東区の新たな文化・教育の場へ
さて、ここまで香椎花園を含む香住ヶ丘の概要、近隣の香椎・千早エリアなどを中心とした東区再開発の状況について触れてきた。こうした周辺事情を踏まえたうえで、香椎花園跡地約12haには一体何がふさわしいのだろうか――。まず、香椎花園の入口近くで事業を行っている経営者らに意見をうかがってみた。
「最終的には西鉄が決めますので、十中八九、マンションなどになるとは思っています。ただ、香住ヶ丘も昔からの住宅地ですし、住民の高齢化も進んでいますから、新たな住宅ができることで、若い世代の人口が増えてくることには期待しています」((有)アクタス・久野憲博取締役)。
「マンションか戸建ができるのでしょうが、せっかく香椎花園があった場所なのですから、あまり無機質な街並みにはなってほしくはありません。個人的には、何かしら文化的な施設ができれば嬉しいですね」((株)キョウエイホーム・末本要一代表取締役)。
余談だが、実は筆者の実家は香住ヶ丘にある。そのため、香住ヶ丘の土地事情は何となくの肌感覚で把握しているが、全体的に丘陵地帯で坂道が多く、ある程度のまとまった平地が確保できるのは、それこそ香椎花園跡地くらいだ。そのため、地場業者からの意見にもあるように、西鉄が跡地活用法を検討した結果、最終的にマンションや戸建ができるのは致し方ない部分はあるとは思う。
まず、大型商業施設が開発される可能性だが、こちらについては現実的でないといっていいだろう。というのも、南に約1kmの場所にはイオンモール香椎浜があるほか、南に約1.5kmの場所にはガーデンズ千早が、さらに東に約1.5kmの場所には大和リース(株)が運営する商業施設「ブランチ 福岡下原」もあり、“超大型”の規模こそないものの、周辺にはすでにライバルとなり得る商業施設が複数存在している。また、現状の香椎花園の周囲を取り巻く道路は片側1車線しかなく、自動車アクセスにも課題がある。西鉄駅前という立地上の優位性はあるが、それだけでは何とも心もとなく、開業後の集客や採算性から考えても、この場所にあえて大型商業施設をつくる必要性は乏しいと見られるからだ。また、これまでの同地での香椎花園の歴史を踏まえると、近隣を含めた市民からの反対の声も上がるだろう。
なお、これまで述べてきた前提条件のなかではまだ触れていないが、実は香椎花園の西側の海岸部分には「香住ヶ丘海岸特別緑地保全地区(0.8ha)」、南側には「御島崎特別緑地保全地区(1.5ha)」という、2つの特別緑地保全地区がそれぞれ近接している。特別緑地保全地区内では建築物の建築などが凍結的に制限されているため、この2地区内では恒久的に緑が担保されているといっていいだろう。その緑のエリアに挟まれるかたちの香椎花園跡地。この「緑」というキーワードは、香椎花園の“レガシー”を受け継ぐ意味でも、押さえておきたいところだ。
【坂田 憲治】
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