スペワ跡にアウトレット誕生へ　北九州開発動向2022（後）

生まれ変わる「北九州の台所」、旦過地区再整備事業

　コクラ・クロサキ リビテーションの対象にはなっていないが、エリア内で注目を集める再開発プロジェクトがある。それは本誌vo.15（19年6月末発刊）でも取り上げた旦過市場の再整備だ。

　“北九州市の台所”として愛され続けてきた「旦過市場」を含めた旦過地区は、小倉都心における重要な商業拠点としての役割を長年担ってきたが、その一方で市場横を流れる神嶽川の浸水被害や密集した木造建築物など、防災・防火面での課題を抱えていた。そのため、旦過地区の安全性を高めるとともに、魅力ある市場として継続させるため、神嶽川の改修と一体となって行っているのが、「旦過地区再整備事業」だ。

　旦過市場の再整備に向けては、これまでに何度も頓挫してきた経緯があるが、12年以降に市と市場関係者がゼロベースでの再整備検討を再開。13年9月に旦過地区まちづくり構想を策定して将来像を取りまとめたうえで、16年6月には「旦過地区まちづくり基本計画」を策定した。さらに、19年10月に市と旦過市場4団体（旦過地区土地建物委員会、北九州市小倉区旦過商業㈿、旦過市場商店街、小倉中央市場㈿）との間でまちづくり協力協定が締結さされた後、20年3月に旦過地区土地区画整理事業の都市計画が決定。21年2月には国の事業認可も受けて旦過地区土地区画整理事業の事業計画も決定し、いよいよ再整備に向けての事業に着手した。

　同事業はまちづくりコンセプトを「～これまでの歴史や雰囲気を受け継ぎながら、これからも『北九州の台所』として愛される旦過市場～」としており、北九州市が施行者となって施行面積約0.6haを整備していく計画。事業費は約34億3,500万円を見込んでいる。計画では、エリア内をA地区、BC地区、D地区、E地区に区分けして整備。BCおよびD・E地区には2階建ての店舗建物を建てるほか、A地区には「立体換地建築物」として1・2階が商業施設で3・4階が駐車場となるS造・地上4階建てのビルを建てる。また、各地区の間の通路は「新市場通り」としてアーケードを設置。また、これらの整備と並行して、橋梁3橋の架け替えや老朽護岸の整備、護岸のかさ上げや川底の掘り下げといった神嶽川の河川改修も行う。全体の事業期間は、20年度から27年度までを予定している。

　なお、北九州市では同再整備事業を進めるにあたって、A地区の4階建ての立体換地建築物の新築工事技術協力業務および実施設計業務を委託する事業者の選定のため、簡易公募型プロポーザルを実施。22年2月、新築工事技術協力業務の優先交渉権者として若築建設（株） 北九州営業所を代表企業とし、（株）内藤ハウス 福岡営業所、（株）プロセスプラスで構成される「若築・内藤・プロセスプラス技術協力共同企業体」が、実施設計業務の受託候補者として（株）大建設計 北九州支所を代表企業とし、（株）agアーキテクツ、（株）水谷設計とで構成される「大建・agアーキテクツ・水谷実施設計共同企業体」がそれぞれ選定された。

　また、3月23日には商店主らでつくるまちづくり会社・旦過総合管理運営（株）が、立体換地建築物の1・2階部分に入るテナントの募集を開始した。募集するのは、1階・30区画分と2階・20区画分の計50区画分で、生鮮、食に関する小売り・物販、飲食店に絞ることで、“北九州の台所”の機能を維持しながら、新たな魅力を創出する。店舗面積は5坪（約16.5m²）～100坪（約330m²）で、賃料は現在調整中。旦過市場商店街HPから出店希望登録を行う方式で、11月末に入居テナントの候補者が選定される見通しとなっている。

　今後は、22年6月末までに旦過市場内の店舗移転を完了させ、7月から既存建物の解体に着工。23年4月から建物整備に着工する予定となっている。順調に進めば、24年4月には生まれ変わった新たな“北九州の台所”が誕生する予定だ。小倉都心部における唯一無二の存在ともいえる旦過市場。その再生の行方には、市民をはじめ多くの人々からの期待と関心が寄せられている。

【坂田　憲治】