2024年04月26日( 金 )

米国の責任追及する三人の識者

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、「ミンスク合意」を履行していれば今回のウクライナでの戦乱は発生していないと主張した4月19日付の記事を紹介する。

ウクライナの戦乱による被害者は誰か。いうまでもない。ウクライナの市民である。ウクライナの市民が犠牲になっている理由はウクライナで戦乱が勃発していることにある。この戦乱は回避可能だったか。答えは明白。戦乱の回避は可能だった。

直接的な問題の発端は2014年にある。14年2月21日。ウクライナ政府とEU諸国で合意が形成された。

ウクライナ政府とEU諸国との間でウクライナとEUとの連携協定が協議されていた。ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領はEUとの連携協定がウクライナ国民の利益にならない現実を踏まえて、協定への署名を先送りした。署名先送りを受けて、ウクライナ政府とEUとの間で2月21日に合意が形成された。

1.15年に予定されていた大統領選挙を14年12月に前倒しして行う。
2.14年憲法に復帰し、大統領制から議院内閣制にシフトするべく、憲法改正を行う。
3.入獄していたティモシェンコ前首相の釈放。
4.暴力行為の禁止(警官側も、反対デモ側も)。

ところが、EUとウクライナ政府の合意成立を忌々しく思う人物がいた。米国のヌーランド国務次官補だ。ヌーランドが米国の駐ウクライナ大使であるジェフリー・ピアットと14年1月28日に電話で会話した音声が同年2月9日にYouTubeで暴露された。

ヌーランドは政権転覆後の新政府の人事について意見を述べるとともに“Fuck the EU”とEUを罵った。ウクライナ政府と平和裏に話し合いを続けるEUを罵ったもの。

合意成立の翌2月22日朝に暴力革命が挙行された。翌朝、独立広場に集まっていた反対派(ヤヌコヴィッチ大統領によるEUとの連携協定を先送りすることへの反対派)に対する狙撃が行われ、多数の人が殺害された。殺害されたのは反対派市民と警官29名。

狙撃を契機にデモ隊は銃器も含めた暴力を行使したが、警官隊は21日の合意を守って暴力行為を控えた。この結果として議会が反対派に占拠され、ヤヌコヴィッチ大統領が国外逃亡に追い込まれた。

反対派市民勢力は憲法の手続きによらず非合法の新政府を樹立。米国が直ちに新政府を承認して政権転覆が既成事実化された。

問題は狙撃が「偽旗作戦」であった可能性が極めて高いこと。

14年2月26日のキャサリン・アシュトンEU外務大臣とウルマス・パエト・エストニア外務大臣の電話でのやりとりが14年3月5日にYouTubeで暴露された。エストニアのパエト外相は2月22日の狙撃について、市民と警官を狙撃したのはヤヌコヴィッチ政権関係者ではなく、反対運動の側が挑発行動として起こしたものであることを、証拠を示して語った。

暴力革命によってヤヌコヴィッチ政権を排除した新勢力代表者は、14年2月23日に「ウクライナ民族社会」の設立を発表。その内容は、ロシア語を使用するすべての者から、ウクライナ民族社会の正当な権利を有するメンバーという地位を剥奪すること、彼らを市民権および政治上の権利において差別することなどだった。

また、創設された非合法政府の副首相、農業大臣、環境大臣、教育大臣、スポーツ大臣、国家安全保障および国防会議議長などの主要ポストに「スヴォボダ」などのネオナチ勢力幹部が多数登用された。

極右勢力が新政権で多数の主要ポストを獲得したことは、新政権樹立に至る活動のなかで極右勢力の影響力が急激に高まったことを背景とする。

ウクライナの国会議員オレフ・ツァリョフが、14年1月にシリアの反政府勢力メンバーとして戦っていた350名のウクライナ人が帰国してネオナチの一員として暴力的デモ活動に参加するようになったと明らかにしたことを小手川大助氏がブログ記事に記述している。

14年2月22日の政権転覆は、米国政府とウクライナのネオナチ勢力による暴力革命によるものであることが浮かび上がる。

この暴力革命による政権転覆にウクライナの親ロシア勢力が反発した。このために内戦が勃発。内戦を収束させるために「ミンスク合意」が制定された。この「ミンスク合意」を履行していれば今回の戦乱は発生していない。正確な過去の検証を踏まえなければ問題を解決することはできない。

「ウクライナ戦乱の真実」を最も早い段階で公刊した書でもある『日本経済の黒い霧 ウクライナ戦乱と資源価格インフレ 修羅場を迎える国際金融市場』(ビジネス社、1,870円(消費税込み)https://amzn.to/3tI34WK)をぜひご高覧賜りたい。

※続きは4月19日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「米国の責任追及する三人の識者」で。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

関連記事