2024年04月18日( 木 )

【再開発】人気の住宅地・姪浜ができるまで

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計画を縮小し決定へ

 87年6月、市は区画整理賛成者の有志数名と「83haの合意形成はもはや不可能。地元から要望もある姪浜駅前を中心とした区域において実現する」方向で協議を行った。
 そうして、たび重なる審議や検討会、説明会を経て88年12月15日、ついに「福岡都市計画事業姪浜土地区画整理事業」の都市計画決定(福岡県告示2003号)がなされ、それまでの遅れを取り戻すために、事業計画の決定が急がれた。福岡県都市計画地方審議会議決を受けて同年10月2日、建設大臣から設計概要の認可申請が許可され、姪浜土地区画整理事業の事実上のスタートを切った。

 事業計画では当初87年から1996年までの事業施行期間を予定していたが、7回の変更を経て、最後の換地処分・清算金交付が行われた2003年まで延長された。対象地域は55万7,246m2。宅地は施行前45万1,438m2に対し、施行後38万5,969m2まで縮小され、道路・堤防などが10万5,808m2から15万4,525m2まで拡大された。また、住民より要望の多かった公園(姪浜中央公園)が整備された(1万6,752m2)。

整理されて広くなった・姪浜大通り
整理されて広くなった・姪浜大通り

完了後の評価は上々

 多くの障壁を乗り越え、実施された姪浜地区土地区画整理事業の総事業費は約503億円。再開発前の姪浜駅南側は、五島山を削ってつくったゴルフ場(旧・西部スポーツガーデン)とその隣に位置する福岡女子高等学校が主な建物だったが、再開発後は区画道路・姪浜中央公園が整備されるとともに、ウエストコート姪浜などの商業施設や西区役所をはじめとする公共施設など、大規模建物が次々に建設されていった。

 住民の反対も多く難航した区画整理事業だったが、「未来の姪浜のために」と行政も粘り強く住民との交渉を重ね、協力することで事業は完了を迎えた。事業が完了した03年に福岡市が行ったアンケート(700世帯対象)では、区画整理後の住居環境が高く評価されていることがわかる。

 道路については「歩道が広がり、安全で歩きやすくなった」が68.6%、「電柱がなくなりゆとりのある街になった」が29.2%。宅地・街並みについては「建物が新築されて街並みが明るくきれいになった」が71.5%、「道路が広くなり、車や歩行者の交通が安全になった」が57.0%と大多数が高評価を示している。また、住みやすさにおいては「住みやすくなった」と感じている人が68.5%となった。「住みにくくなった、どちらともいえない」が4.3%。また、「事業開始前は住んでいなかったのでよくわからない」が48.7%となった。

 区画整理事業が完了してから約20年が経った現在、事業をめぐって住民と行政の間にこれほどの対立があったことを知る区民は、そう多くないだろう。過去の区画整理事業を知らない姪浜出身・在住の新社会人(23歳)は、姪浜について「買い物もしやすく交通利便性も高い。海や山などの自然や歴史もあり、豊かで住みやすい街」と話している。

姪浜区画整理前後の土地活用
姪浜区画整理前後の土地活用

(了)

【麓 由哉】

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