2024年04月20日( 土 )

京都新聞を呪縛した白石浩子、イトマン事件・許永中とも渡り合う(前)

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 報道各社が、(株)京都新聞社の持株会社、(株)京都新聞ホールディングス(HD)の前代未聞の不祥事を報じた。主役は京都新聞の“女帝”として君臨してきた元相談役・白石浩子氏(81)だ。バブルの時代、大阪の中堅商社イトマンを舞台にした戦後最大級といわれた経済事件で、その名を轟かした許永中氏。グループを揺るがしたお家騒動の際、「フィクサー」許永中氏と渡り合ったのが白石浩子氏だ。いったい“女帝”に何があったのだろうか。

白石浩子氏の処遇はタブー

新聞 イメージ    「京都新聞HD 元相談役に総額16億円超の違法報酬か 第三者委指摘」と4月21日付の毎日新聞がスクープ報道。同日、京都新聞ホールディングス(HD)は第三者委員会の報告書を公表した。

 翌22日、読売新聞は「京都新聞側『白石浩子氏の処遇はタブー』・・・ほぼない勤務実態、社長より高額な報酬」と報じ、朝日新聞には「京都新聞HDが違法報酬16億円 元相談役の大株主に34年」の見出しが躍った。

 では、お膝元の京都新聞はどう伝えたか。4月22日付で「『オーナー家』の過剰な聖域化が不祥事生む 京都新聞HD違法報酬問題」と報じた。

 〈京都新聞ホールディングス(HD)が元相談役・白石浩子氏(81)に違法に報酬を支出していた問題で、第三者委員会は不祥事の背景として、「オーナー家」と呼ばれた白石家が社内におよぼす影響力の大きさを指摘した。歴代の経営陣は自分の地位が、危うくなるのを恐れ、白石家の一員で大株主である浩子氏の処遇に触れることを「タブー視」したと分析した。〉

浩子氏への違法な支払い19億円

 京都新聞の報道を基に、この間の経緯をたどってみよう。

 浩子氏の報酬をめぐっては2014年の大阪国税局の税務調査で過大との指摘を受けたが、修正申告した後も高額の支払いが続いた。20年に京都新聞グループ内で疑問視する声が挙がったため、内部調査を実施。不適切な可能性があると判断して昨年3月に相談役を解職した。

 京都新聞HDは同6月に弁護士の元大阪弁護士会会長・小原正敏氏が委員長を務める第三者委員会を設置、調査を進めていた。

 第三者委の報告書によると、浩子氏への報酬は子会社分を含め、34年間で最大年約6,000万円、総額約16億4,700万円に上った。また、私邸の管理費用として少なくとも2億5,900万円を支払っていた。 

 第三者委は、浩子氏が在職中、出社せずに業績報告を受けるなどしていただけで「(同HDなどが)報酬に見合う役務を受けたとは認められない」と判断。特定の株主に対する財産上の利益供与を禁じる会社法の規定に反したと指摘した。

カネを出すから口を出すなの密約か

 浩子氏はなぜ、社長を上回る役員報酬を受け取ることができたのか。

 浩子氏は資産管理会社と個人で28.4%のHDの株式を保有している。報告書は、違法な支払いが始まった経緯について「(当時の経営陣は)浩子氏に対し、大株主として経営方針に口出ししない代替に多額の報酬を保証する合意が成立した」と推認した。カネを出すから口を出すなというわけだ。

 〈経営陣は、事業を円滑に進めるために浩子氏に「過剰な配慮」をするようになったと認定。その状況が長期間続いたことで、「浩子氏の処遇について触れること自体をタブー視する組織風土」が経営陣に醸成されたとした。

 また報告書では、経営陣は大株主の浩子氏について、「その意向に反すると取締役を解任されるなどのリスクがあると認識していた」と推認。自分たちの代で処遇を見直すことが見送られ、前例踏襲が続いたと分析した。〉
(前出京都新聞)

 経営陣は反撃に出る。10年の時効を考慮したうえで、浩子氏や不正に関与した元役員らに返還を求める。現役員のなかで支払いに関わったHD前社長の松山和義取締役(59)と、浩子氏の息子の白石京大取締役(48)は退任させる。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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