2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

【神風、円安2】TSMCの日本拠点強化と日台協力が産業復活のカギ(4)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は2022年5月6日の「日本産業復活の神風、円安がやってきた!!(2)TSMCの日本拠点強化と日台産業協力がカギに」を紹介。

(2)日本にハイテク産業を集積するには円安は必須

産業集積とつらら

 産業集積はどのようにしてできるのだろうか。多くの製品は特定の地域の特産となっている。そこにしかない天然資源、海山の珍味に由来するものもあるが、たいていはほとんど偶然の産物である。なぜデトロイトが自動車のメッカになったのか。それはフォードの出生地がデトロイト郊外のディアボーンであり、そこに最初の量産工場がつくられたことに由来する。なぜシリコンバレーがハイテクのメッカになったかといえば、スタンフォード大学出身の研究者・起業家たちがそこに拠点をつくったことから始まった。

 このような産業集積の勃興は、まるでつららが一冬かけて成長する姿に似ている。なぜ、雨どいの特定のところに巨大なつららが形成されるのだろうか。それは雨どいの突起かゴミの付着か、何らかの理由によって最初の一滴がそこから垂れたことに始まる。2滴目以降も当然同じポイントから滴れ落ちるので、やがて巨大なつららが形成されることになる。こう考えると、つららの生成には、(1)最初の1滴、(2)持続的な水滴の氷化を可能にする低温の2つが必須ということになる。産業集積を考えた場合、最初の1滴にあたるものが政策であり、低温の持続にあたるものが、有利な価格競争力を維持できる通貨安となぞらえることができる。

 今、米国と西側諸国は脱中国のサプライチェーンの構築を迫られている。また、各国は産業の頭脳ともいえる半導体自給の確保に躍起となっている。どうしても自国に産業のつららをつくらねばならないとすれば、偶然ではなく政策によって確実に最初の1滴を垂らす必要がある。また、つららが早く確実に成長できるように、有利な為替レートの維持が必要である。

ハイテク技術の潮目到来と円安で日本復活のチャンス

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 日本のハイテク復活は日本経済の失地回復にとって決定的に重要である。そして今進行中の円安により、日本復活の必要十分条件が満たされつつあるといえる。ハイテク中枢で負けた日本は、周辺底辺のニッチ分野を圧倒的に押さえており、世界のサプライチェーンのボトルネックが日本に集中するという特異なポジションにある。今また、半導体・エレクトロニクス産業は潮目の転期を迎えている。(1)半導体技術・微細化のさらなる進化・ブレークスルーの場面にあること、(2)半導体を受容する基幹的エレクトロニクス製品もスマホからポストスマホへと変化していく転換期にあることである。これまでのハイテクの勝者が、そのまま勝ち続けることができるとは限らない。

 新エコシステムが必要となるときに、日本が次の時代の勝者になる条件があることは、これまでの分析から明らかであろう。

 改めて日本でのハイテク産業集積の再生(つららの形成)には、十分な低温、つまり円安が必要だということが分かるだろう。財政金融当局は、ミクロ産業の価格競争力の強化に資する円安堅持こそ必要だと、肝に銘じてもらいたい。

 今の日本ではTSMCを中核として、ハイテク産業集積の再構築を図ることが喫緊の課題であるが、1ドル130円の円安定着は神風になるのではないか。

(つづく)

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