2024年04月26日( 金 )

【検証】山口FG取締役会議事録(2)

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「学級崩壊」のような取締役会

山口フィナンシャルグループ    この日の取締役会では、吉村氏は一貫して執行権限のあり方、取締役会のあり方について問題提起を続けている。それに対し、議事を進めてさっさと終わらせようとする佃氏、国政氏、福田氏の姿が見えてくる。提出された議案の賛否を決めるだけが取締役会の役目ではないはずだ。どの会議体であっても、どこまで決裁するかというのは組織運営の基本であろう。それを決めずして取締役会では何を議論するのか。すべての議論の根幹であり、それを曖昧にして決議などできるはずがない。吉村氏は多くの問題を指摘され、取締役を退任することになったのだが、この日の吉村氏の主張はもっともである。

 また、現経営陣は吉村氏が不必要に大量の議案を取締役会に上程したと主張していたが、事情が大きく異なることも判明した。議事録のなかでは、この日以前の取締役会において吉村氏が取締役決議は不要と考えていたものの、社外取締役から決議が必要だと指摘された経緯が描かれている。それを受けて吉村氏が取締役会に議案を上程したというのが真相のようだ。吉村氏も独断で決めたわけではなく、P10では福田氏、P17では椋梨氏に相談していたことが分かる。吉村氏は福田氏、椋梨氏に嵌められてしまったようにも思われる。椋梨氏は上場企業の社長であるわけだが、この裏切りの場面は実に姑息であり、小物ぶりは滑稽ですらある。上場企業のトップに相応しい人物ではないのだろう。

 吉村氏は再三にわたって経緯の説明を求めているが、国政氏が一方的に遮り、不公平極まりない議事進行が行われている。事前に手筈が協議されていたものと考えなければ不自然である。最後は、佃氏の「はい、はいはいはいはい賛成。」(P18)という発言で強引に採決が行われている。あまりにも幼稚な展開だ。「はい」は1回だけだという、子どもの躾のようなことから始める必要がありそうだ。

 この日の取締役会では時間が不足し、報告事項の説明は割愛されている。しかし、冒頭ではクーデター側の面々がアイフルとの交渉に関して取締役会に情報共有されなかったことを問題にしている。なんという矛盾だろうか。とても上場企業の取締役会とは思えず、小学生の学級会のようなありさまだ。

 クーデターに積極的には参加していないほかの取締役はどのような発言をしているのか。P64に吉村氏の解任に対して、末松弥奈子取締役の次のような発言がある。
「実際にその社内の取締役のチーム感みたいなものかちょっと感じられなくて、そこの部分が、取締役をやっている自分自身も不安におもうところがございました。今回の決議のところについては、手を挙げられなかったっていうのが正直な気持ちでございます」

 何とも不思議な発言内容だ。この発言のなかに吉村氏の責任とすべきものが含まれていない。“社内の取締役のチーム感”を問うのであれば、社長である椋梨氏も連帯責任であろう。“自分自身も不安におもう”というのは自己の能力の問題だ。不安や心配があれば事務局に相談しながら責務をはたすべきものであり、吉村氏とは何ら関係がないではないか。吉村氏の解任に賛同するのであれば、NetIB-Newsを始めとした報道を引用するなどして、吉村氏に問題があるから賛同するのだと堂々と述べるべきである。どこか他人事で当事者意識が欠けており、経営責任を負う取締役の発言として相応しくない。上場企業のトップを解任するということの重大性を認識しているとは思えないのだが…。

 ほかの取締役にもいえることだが、経営者としての自覚はあるのだろうか。まるでお遊戯会にでも参加しているようで、経営者として「何が何でも従業員を守る」という覚悟や気迫を感じない。

「クーデター」の隠蔽工作

 国政氏は口を滑らせたのか、「皆さんもこの1か月色々と考えてこられて」(P61)と発言している。文脈からすると、吉村氏の解任についてとしか思えないのだが、解任はこの日に発議されて各々の取締役がその場で判断して決まったことではなかったのか。吉村氏解任の謀議が行われていたと考えなければ、あまりにも不自然な発言である。

 取締役会の終盤では、解職か否か、クーデターか否かで議論が交わされている。ことの重大性を考えて記者会見で「説明すべき」と主張する吉村氏に対し、記者会見を行わずに逃げ切ろうとするクーデター側の姿が見てとれる。椋梨氏は「リリースについては、理由なしで出していただいて」(P70)と積極的に説明責任を果たそうとしていない。吉村氏はクーデターではないかという質問が出るのではないかと問題提起し、国政氏は「そういう質問が出たらさな違いますといえばいいのです。」とあまりにも無責任で不誠実な回答を提案し、福田氏は「解職じゃないですよ、違う。」(P69)、「異動だけで解職ではないですよ。そう。」(P69)、「くれぐれも解職とかではない。正確に書いてください」(P70)と何度も解職を否定し、事実上の解任でありながら、クーデターを隠蔽しようとする姿勢に終始している。

 吉村氏の代表取締役会長就任は事前に公表され、この取締役会と同日の株主総会ではそれを前提に吉村氏の取締役選任を行っている。株主や世間をバカにしており、あまりにも身勝手な態度だ。クーデター側には株主、従業員、地域社会といったステークホルダーへの責任を果たそうという姿勢が見えてこない。どのような表現をしようとも、実態としてクーデターであることは否定のしようがないではないか。取締役がこのような態度であれば、山口FGがさまざまな利害関係者に無責任な姿勢であることも仕方あるまい。 

臨時取締役会議事録稿本

(つづく)

【特別取材班】

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