2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

【検証】山口FG取締役会議事録(3)

社外取締役の重鎮・佃和夫氏

 さて、クーデターに参画した山口FGの社外取締役はどのような人物なのか。まずは、この日の取締役会で横暴に振る舞っていた佃和夫氏について見ていきたい。山口FGの取締役において、経歴をみても最大の重鎮といえるのが佃氏である。東京大学大学院修了後、1968年に三菱重工業(株)(三菱重工)に入社し、2003年に社長まで上り詰めた人物である。会長を経て、安倍政権時には首相の私的諮問機関「教育再生実行会議」の委員など、公的な要職も務めた。三菱商事などの社外取締役や成蹊学園の理事長も務めるなど、いわば財界の重鎮だ。山口県(旧・熊毛町)出身という縁から山口FGの社外取締役を引き受けたものと思われる。

 山口FGに関する一部報道によると、福田進・取締役監査等委員とメールでクーデターの謀議を行い、取締役会では吉村猛・前会長の解任動議を主導したとされていた。今回の稿本により、事実であったことが裏付けられたといえよう。

 過去に報道された通り、航空機事業や船舶事業の失敗により三菱重工は大変な苦境に陥っている。航空機事業に至っては、1機も飛ばせないまま開発停止に陥るというありさまである。この航空機事業参入を決定したのは佃氏が社長の時である。造船事業の不振も続いており、九州の長崎造船所も売却などにより事業縮小を行っている。このような事態になっても責任を取ったトップはおらず、三菱重工の企業体質にも問題があるといえよう。

臨時取締役会議事録稿本

    佃氏が社長のときにはどのようなことがあったのか。当時、大きく報道された事件として橋梁談合事件がある。2005年の株主総会でも追及され、当時の佃社長は、「真摯かつ厳粛に受け止めている。二度と起こさないように監査機能強化を図っていく」と株主に陳謝した記録がある。株主の「ここ数年ずっと不祥事続きだ。今の三菱グループの低落はひどい」との批判も記録として残っている。

この事件では、JFEエンジニアリングが逮捕・起訴された元橋梁営業部長を懲戒解雇したのに対し、同様に逮捕・起訴された三菱重工の次長は解雇とはならず、「主幹部員」となったそうだ。当時の三菱重工で「主幹」とは、部下のいない部長クラスであり、次長から部長への昇格のようにも思われる。

 役員の処分はどうかというと、西岡会長、佃社長ら3人の2カ月間20%減俸、橋梁担当の松浦常務は「けん責」という、軽い処分だった。西岡会長は定例会見で、国土交通省などの官公庁からの天下り受け入れを継続すると発言したりしたため、罪の意識が社内に広がることはなかったそうだ。

 その後、国交省からの公共事業での指名停止措置を受けたため、数百億円単位で売上が落ちる見込みとなった。そのことを報告したところ、経営陣からは「ほかでカバーせよ」と無理な目標を課され、現場社員の不信を買ったそうだ。違法行為を摘発されながら、ここまで法令順守の意識に乏しい大企業は珍しい。はたして、今ではコンプライアンスよりも売上や利益を優先する企業体質は変わったのだろうか。

 さて、三菱重工も属する三菱グループのある企業では、元トップの不倫が噂されたことがある。「ZAITEN」(2018年10月号・2019年9月号)では「巨大企業の相談役も兼ねる御仁の醜聞」「名古屋に愛人を囲う大学理事長」と報じられた。三菱グループ内で騒動になったものの、誰も当人の首に鈴を付けられず、「裸の王様」状態だったという。どこかで聞いたような話である。山口FGトップの愛人問題を追及できないことにも合点がいく。

あまりにも無礼な態度の佃氏

 この日の取締役会での佃氏の言動は傍若無人、慇懃無礼という言葉がよく当てはまる。この日だけそうだったとは考えられず、常にこのような態度なのであろう。山口FGのトップである吉村氏に対して、何度も「おまえ」という呼び方をしている。あまりにも下品であり、相手への敬意のかけらもない。「一番の年寄りからちょっと言わせてもらうとね」(P21)といった発言もあり、強引に議論を封じるような態度も垣間見える。すべての取締役は年齢に関係なく対等な関係であり、自らの権勢を示すような発言は慎むべきだ。このような人物が三菱重工という日本の名門企業のトップを務め、今も上場している金融機関の社外取締役を務めているとは信じられない思いだ。他にも唖然とする発言がある。

「それがわからんようではね、執行役員のその役目を果たしてないということ。」(P6)

 質問を行った渡部伸一執行役員(当時)に対する発言である。渡部氏の質問内容は的外れなものではなく、至極真っ当なものである。それを相手への誠意もなく「役目を果たしていない」とは失礼なだけでなく、立場の違いを考えればパワハラである。この取締役会の翌7月、渡部執行役員は不自然な解任となるのだが、この取締役会の延長だと考えるべきだろう。山口FGでは、気に食わない者は辞めさせるということが平然と行われているようだ。後に、渡部氏は吉村氏とともに記者会見を行い、解任の不当性を主張している。この日のやり取りを考えると、不当な解任だったという疑惑は濃厚だ。

(つづく)

【特別取材班】

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