2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

「地元発展に貢献する」 創業の志を未来永劫に継ぐ(後)

大高建設(株)

 「物流建設のオオタカ」─物流建設のエキスパートである大高建設(株)。創業者で現会長・大木孝朋氏は2018年5月に代表取締役および取締役から退き、後進に経営を託した。孝朋氏の子息・大木孝一郎代表取締役社長と彼を支える役員・幹部により、同社の体制はいっそう強固となった。同社の歴史を回顧しながら、現在そして未来についてレポートする。

人とのご縁を大切にする

大高建設    同社は「建築に関わるすべての人々が、幸せになれるような会社経営を行う」という姿勢を鮮明にしている。前述した通り、同社は顧客や協力会社などの取引関係者とともに社員が仲間としての関係を構築し、すべての人々とのつながりを大切にしながら事業を推進している。つまり、どこかが負担を強いられる関係ではなく、お互いが協力し合って建物をつくり上げる。協力し合うという志向であることで、互いの絆が強くなり、強い絆が同社の経営を支える原動力となっている。

 また、経営理念の1つである「社員に幸せを与える」は、設立当初から継続されている。業績に応じて支給される決算賞与や、工事完成の労いの意を込めて支給される竣工手当などはその一例で、会社はそれらを通して社員を大切にする理念を体現化している。同社は、どこよりも高い技術力・施工力、そして人との縁を大切にしながら、建設を通して地域社会への貢献を続けている。

地元建設業界の発展のために

 冒頭で紹介したように、大木会長は事業承継について「“まさかの願い”が実現できました」と話す。加えて、「以前プロパー社員のなかから選抜して、社長を継いでもらおうと計画し、実行したことがありました。しかし、残念ながら思い通りに事業承継はできませんでした。今一度、事業承継の計画を再構築し、進めてきました」と経緯を語る。

 「一方で、福岡県内の建設業、とくに伝統と歴史のある企業が事業承継で悩んでいます。3代続いている建設業が岐路に立たされているなど、厳しい局面を迎えていることは事実です。おかげさまで我が社は、社長の孝一郎、そして双方にコアメンバーの役員が支える体制が整い、経営はより強固なものに進化しています。私が今日まで経験した経営、そして事業承継についても、地元の建設業経営者の参考になればと思います」(大木会長)。

 大木会長は1933年に長崎県大村市で生まれた。長崎県立長崎工業高等学校を卒業後、一級建築士、測量士、火薬取扱主任者のライセンスを取得し、炭鉱、建築設計事務所、陸上自衛隊を経て61年に岡崎工業へ入社した経歴をもつ。「私はもともと技術屋ですので、貸借対照表など会計知識は人並み以下です。単一工事損益の集計1本でやってきました。その心は、月次決算を必ず実施することです。先方に“月次決算されていますか”と問いかけると、実施していないという会社も多いようです」(同)。

 大木会長は、単一工事損益をベースにした表計算の仕組みを独自でつくり上げた。「ワープロセットが200万円のころに、購入し作成しました。現在のエクセルです。税法は経理のスタッフに事細かに聞き出しました。工事の原価表を並べて集計したものが、設定したカーソルに自動計算される。そのほか、税関係などあらゆる計数についての項目を並べ、月次決算が実施できる計算の仕組みをつくり上げました。近年では同業者に『事業承継』『月次決算』などについて相談を受ける機会があり、持論を展開したところ参考になったとのことでした」(同)。

 大木会長は、自らが策定し実行してきた建設会社における月次決算の重要性を説きながら、経営の礎について伝えている。相談先の建設会社からは感謝されているという。

健康第1、仕事第2の心得

大高建設(株) 会長 大木 孝朋 氏
大高建設(株) 会長 大木 孝朋 氏

    大木会長は、「人に尽くす」姿勢が鮮明である。同社が設立して47年を迎えたなか、自社および同業他社を問わず、これまで培った無形の財産を次世代に引き継いでいく。大木会長は今年で89歳となった。高齢である現在も毎日出社し、同社の事業推移を見守る。「本当は現場周りが好きで実施したいのですが、代表取締役を退いてからは封印しています。私が現場周りを行うことで、ほかの役員や社員が意識してしまいます。それでは、本当の事業承継ができないと確信したので、封印することにしました」(同)。

 大木会長は42歳で同社を設立。それ以前は、技術職を経て営業に専念していた。「20〜30代は率先して“雑用”を引き受けました。人間関係を広げるために、会合などの司会・進行係や幹事・世話役を率先してやるように心がけてきました。率先することで、“大木は会を立派に仕切っている”という評価をいただきました。雑用を引き受けることで、人とのつながりが深くなり、自身の財産になりました」と語る大木会長。若き時代に猛烈に働き続けたことで、心身の屈強さが身についた。そして当時高額であったワープロを導入し、自ら新たな道を切り拓くなど時代の最先端への関心を常に持つ意欲こそが、大木会長の活動の源である。

 「現状に甘んじることなく、毎日進化し続ける志向と実践力こそ、我が社そのものです。建設業はバイオリズムがあるのが当然です。建設業の好不況は3~5年と思っています。経営者は毎日の数字を読むこと、確認することが基本と考えます。なぜなら、社員とその家族の人生を抱えているからです。社員とその家族を守るのは経営者の使命と思っています」(同)。

 ここまで、同社の歩みと創業者・大木会長が現在取り組んでいる活動について述べた。高い技術力と開発研究、そして行動力の大切さを力説する大木会長は最後に、「健康第1、仕事第2です。何をおいても1人ひとりの健康が最優先です。オーバーワークで心身の健康を損なうことは断じてあってはなりません」と話した。

 建設業の経営について現実を大切にする考え方と、1人ひとりを尊重する温かな人間力が融合した大木会長の理念。その理念を現社長と役員が正しく引き継いでいる。そして堅実強固な建設業の組織として、いっそうの飛躍が期待される。建設業の事業承継のお手本となっている。

(了)

【河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:大木 孝一郎
所在地:福岡市博多区上牟田1-29-6
設 立:1975年3月
資本金:9,500万円
売上高:(21/3)47億6,480万円

(前)

関連記事