2024年05月03日( 金 )

筑後川本格改修100周年、レジリエンス強化へ

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「流域治水」とまちづくり

 ──流域治水とは、どのようなものでしょうか。

 吉田 必要な対策の1つとして、とくに力を入れている取り組みが「流域治水」です。国全体でも提唱しているもので、役割・空間の視野を広げて、河川だけではなく住まい方や都市計画、田んぼダムの取り組みなども含めた総合的な取り組みであり、都市計画部局や農業部局、企業や地域住民の皆さんにも協力をお願いする必要があります。

 当事務所では昨年10月に流域治水企画室を設置し、筑後川・矢部川水系の流域治水プロジェクトの“見える化”と、その推進の旗振り・けん引に取り組んでいます。久留米市では、市街化調整区域における開発許可制度を見直しました。これにより、下流域で大雨が予想される場合には、クリークの水を事前に抜いて雨を貯留する「先行排水」などの取り組みが進んでいます。流域の皆さんの意識が、自分たちでも担うべきことは担うというように大きく変わってきたと感じます。

地域を強靱なものに

 ──地域づくりについてお聞きします。

 吉田 近年、国土強靱化という概念が提唱されています。大洪水や大地震などによる被害をゼロにするのは難しいのですが、人命を最優先に考え、経済的な損害は極力軽微に抑える地域のレジリエンス向上に貢献したいと考えています。

筑後川 本格改修100周年    先ほどの「流域治水」もそうした考えを踏まえたもので、ある程度の被害は想定し、万が一ダメージを受けても速やかに平常の活動レベルに戻れるような地域づくり、まちづくりが肝要だと思っています。たとえば、昨年視察したイオン小郡ショッピングセンターは、「平成30年7月豪雨」で冠水の被害に遭いましたが、その後、隣接する河川にカメラと水位計を設置し、災害時には来客を早く退店させるなどの防災体制を整えたほか、駐車場入口に止水板や店舗入り口に積み上げる土嚢を用意するなど、一定の被害を受けても事業を継続できるように対策を講じています。企業の皆さんには、このような取り組みを含めた事業継続計画(BCP)の策定など、大災害への備えを積極的に行っていただきたいと思います。

 個人でも組織でも、自らできることはもちろん、協力できるところは一緒に行うという取り組みが、強靱な地域をつくり、地域のレジリエンスを高めていきます。筑後川本格改修100周年を機に、このようなことについても皆さんと考えていきたいと思います。

(了)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
吉田  大
(よしだ・ひろし)
1969年福井県生まれ。京都大学大学院修了(土木工学専攻)。94年建設省(現・国土交通省)入省。内閣府沖縄総合事務局北部ダム事務所長、国土交通省水管理・国土保全局河川環境課流水管理室水防企画官、中国地方整備局企画部企画調整官、JR東日本建設工事部次長、内閣官房国土強靱化推進室企画官、(独)水資源機構ダム事業部事業課長を経て、21年7月より現職。

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