2022年08月13日( 土 )
by データ・マックス

【鮫島タイムス別館】「維新ぎらい」大石あきこ氏との対談

“維新キラー”大石氏との対談

『維新ぎらい』

 巨大新聞社の崩壊過程と政治報道の内幕を描いた拙著『朝日新聞政治部』(講談社刊)は5月27日の発売前から大きな反響をいただき、早くも4万部を突破した。近年のノンフィクションでは異例の好調ぶりらしい。ご購入いただいた皆様、ほんとうにありがとうございます。

 少し遅れて同じ講談社から刊行されたのが、れいわ新選組の大石あきこ衆院議員の『維新ぎらい』だ。日本維新の会を創設した橋下徹氏とのバトルで名をあげた彼女が維新を滅多切りにするこの新書は、これまた発売早々に3刷まで決定し、講談社の本では拙著と売上の1位と2位を連日競い合っているという。

 そこで講談社の編集者が悪巧みを思いついたのか、大石氏と私が対談することになった。ふたりは初対面。あらかじめ互いの本に目を通しあい、6月17日、衆院第二議員会館の大石事務所で対談は実現した。

「維新ぎらい」じつは 立憲ぎらい?

 大石さんの『維新ぎらい』は面白かった。橋下氏に提訴されるほど噛みつき、国会では岸田文雄首相に「財務省の犬」と噛みつく。闘争心あふれる政治家が現れたものだと注目していたが、負けん気の強さは文章のいたるところに滲(にじ)んでいた。一方で、国会議員になって慌ただしい日々を送るなかで、自分自身のなかにも効率性を重視してゴリ押しする「橋下性」が潜んでいることを冷静に分析していた。

 与野党とも上司に忠実なサラリーマン政治家が溢(あふ)れる昨今の政界ではすっかり珍しくなった気骨ある国会議員が誕生し、私は小躍りしながら大石事務所へ向かったのである。

 予想にたがわず、小さな体の全身からエネルギーがほとばしる女性だった。対談は冒頭から思わぬ方向に転がっていく。『維新ぎらい』のプロモーション企画のはずなのに、彼女はいきなり立憲民主党の批判をまくし立てたのだ。

 私は彼女の政治センスに非凡さを感じた。維新は年明けからスキャンダルが相次いで支持率が続落している。鰻登りの維新を叩けばれいわの存在感は高まるが、落ち目の維新ばかりを叩いたところですぐに飽きられてしまうだろう。彼女は「維新キラー」として名を馳せたが、そこに安住しなかった。むしろこの局面では立憲批判を繰り出したほうが得策であると判断し、機敏に立ち回ったのだろう。

 思い当たる節はあった。大石氏は年明けから維新との対決姿勢をにわかに強めた立憲最高顧問の菅直人元首相とツーショット写真に収まり「共闘」を演出した。当時、立憲は参院選大阪選挙区に候補者を立てていなかった。大石氏は地元・大阪の盟友であり、参院選大阪選挙区かられいわ公認で出馬する八幡愛氏への支援を取り付けることを期待したに違いない。

 だが、菅氏は老獪(ろうかい)だった。大石氏と会って「維新キラーはれいわだけではない」という印象を広めた途端、八幡氏を支援するどころか立憲の大阪特命担当に自ら就任して立憲新人を大阪に擁立したのである。

 大石氏は菅氏に利用された格好になった。きっと怒り心頭だろう。私はそう推察して菅氏の話題を切り出してみた。案の定、大石氏の表情はこわばった。やはり菅氏に怒っている!

 彼女の闘争心を目の当たりにして、政界の権謀術数に埋もれることなく己の道を切り拓く政治家向きの気質を感じた。そればかりではない。立場の弱い人々のことを語るときの彼女の表情は一気に緩む。負けん気と優しさが同居する新人政治家が永田町の片隅に出現したと私は頼もしく思った。

 永田町では稀少な、実に爽快な対談だった。現代ビジネスで詳報されている。サメタイのYouTube番組でも紹介している。よろしければご覧ください。


▼関連リンク
現代ビジネス/維新ぎらいより、立憲ぎらい⁉~参院選「無風」は野党の責任ちゃうんかい!/大石あきこ×鮫島浩
サメタイYouTube/「大石あきこ×鮫島浩」立憲と朝日はそっくり!?~本気で闘ってるんかい!日本のリベラルが負け続けるわけはここにある/『維新ぎらい』『朝日新聞政治部』ダブル刊行記念対談
 

『朝日新聞政治部』(講談社/304頁/1,980円)
「吉田調書事件」の当事者となった元エース記者が目にした、崩壊する大新聞の中枢。登場人物すべて実名の内部告発ノンフィクション。
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【ジャーナリスト/鮫島 浩】


<プロフィール>
鮫島 浩
(さめじま・ひろし)
ジャーナリスト/鮫島 浩ジャーナリスト、『SAMEJIMA TIMES』主宰。香川県立高松高校を経て1994年、京都大学法学部を卒業。朝日新聞に入社。政治記者として菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら幅広い政治家を担当。2010年に39歳の若さで政治部デスクに異例の抜擢。12年に特別報道部デスクへ。数多くの調査報道を指揮し「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。14年に福島原発事故「吉田調書報道」を担当して“失脚”。テレビ朝日、AbemaTV、ABCラジオなど出演多数。21年5月31日、49歳で新聞社を退社し独立。
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