2022年06月25日( 土 )
by データ・マックス

イーロン・マスク氏の飽くなき野望:インド洋の島国スリランカの買収!

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、6月24日付の記事を紹介する。

スリランカ イメージ    インド洋に浮かぶ風光明媚な島国スリランカが国家存亡の危機に直面しています。「インド洋の真珠」と呼ばれていましたが、エネルギー源の石油や食糧が不足し、各地で住民と警察の間で対立が発生。ガソリンを給油しようとする車が何時間も待たされる一方で、特権階級の人間は優先的に給油を受けているため、一般国民の怒りが爆発するような状況です。

 モノ不足からインフレも凄まじく、40%を超える状態です。国連の調査では「スリランカ人の5人に4人は飢餓状態に陥る」とのこと。同国のウィクレメシンゲ首相も「これから500万人が食糧不足という危機に直面する」と警告を発しています。

 世界中からダイバーを魅了してきたスリランカに何が起こったのでしょうか。政府は緊急事態宣言を発令し、学校や多くの会社に対して2週間の閉鎖を求めています。とはいえ、国民の怒りや不信感はぬぐえず、各地で流血騒ぎとなってしまいました。

 旧英国の植民地でしたが1948年に独立しました。かつてはセイロンと呼ばれていたものです。セイロン・ティーは有名な特産品で、日本にもファンが多くいます。

 日本とも関係は深く、農業や水産業を学ぶために研修生や留学生が多数来日していたものです。スリランカにとって、日本は中国、インドに次ぐ経済援助提供国の第3位に他なりません。

 また、美しい海や満天の星空を満喫できる山々など観光資源や希少金属の宝庫でもあり、世界からダイアモンドハンターが押し掛けていました。有名な未来学者でSF作家として知られる、小生とも親しかったアーサー・C・クラーク氏もこの島に魅せられ、晩年は活動の拠点を移したほどです。

 ところが、急速な経済発展を目指し、裏付けのないまま紙幣を乱発した結果、史上最悪の債務不履行、すなわち、財政破綻に陥ってしまいました。隣国のインドが30億ドルの経済支援を行っていますが、「焼け石に水」状態です。最大の原因はインフラ整備の名目で中国や国際金融機関から多額の借り入れを重ねたこと。杜撰な計画だったため、産業も雇用も生まれることはありませんでした。

 それに輪をかけたのが新型コロナウィルスの蔓延による観光客の激減です。さらに追い打ちをかけたのがウクライナ戦争でした。こうした影響もあり、食糧とエネルギー危機に直面し、国内のいたるところでデモや騒乱事件が発生しています。政権交代も起きましたが、事態が鎮静化する兆しはありません。

 かつて韓国が経験したように、IMFの管理下に入る可能性も高く、調査団が入っています。

 そんな中、救世主として名前が取り沙汰され始めたのがイーロン・マスク氏です。ご存知、電気自動車「テスラ」や宇宙ロケット「スペースX」の創業者で、今や世界1の大富豪です。

 最近ではツイッターの買収提案やウクライナへの通信衛星を使ったインターネットサービスの提供で、常に話題満載の人物です。

 ロシアに軍事侵攻されたウクライナへ救済の手を差し伸べていることが注目され、国家破綻の危機に直面するスリランカも救って欲しいという声が湧き上がっています。はたしてマスク氏はどう対応するのでしょうか。

 実は、スリランカの債務は500億ドルと言われています。これは2,700億ドルの資産を有するマスク氏であれば、何とかできる金額であることは間違いありません。その上、ツイッターの買収提案の金額は440億ドルですから、それを棚上げすれば、簡単にスリランカという国家を自分のものにできます。

 しかも、マスク氏は「スターリンク」という通信衛星会社を所有していますが、宇宙からの電波を地球上のどこでも届けることを売り物にしてきました。もし、スリランカというインド洋の島国を手に入れることができれば、アジアと中東、アフリカをつなぐシーレーンや海底ケーブルの要衝を押さえることが可能になります。

 空と海からデジタル社会を自由にコントロールできるとなれば、野心家のマスク氏であれば「まんざらでもない話」となるかもしれません。

 余り知られていませんが、ロシアもスリランカに触手を伸ばしています。石油危機に陥ったスリランカに対して、国際価格より安い値段で石油を提供すると申し出ました。しかし、現金決済を要求しているため、スリランカ政府は紙幣の増刷に走っています。これでは財政赤字は悪化する一方で、悪性インフレは際限なく続くことになるでしょう。

 さらには、一帯一路の名の下でインフラ整備に資金を提供してきた中国の思惑も隠されています。スリランカ南端のハンバントタ港は2017年から99年間契約で中国の国有企業に貸与されているからです。借金の返済ができなければ、港も土地も中国のものになります。いわゆる「債務の罠」の象徴的ケースかも知れません。ウクライナに次いで、ここでもプーチン大統領とマスク氏、そして中国による三つ巴の熱い戦いが始まりそうです。

 次号「第301回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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