2024年04月27日( 土 )

弱肉強食推進が日本を破滅させる

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は「賃金の最低保証ライン引き上げ」を求めた6月26日付の記事を紹介する。

日本経済は過去30年間成長していない。

「改革なくして成長なし」

「アベノミクス」

「成長戦略」

など、多くの言葉が叫ばれてきたが成長しなかった。

日本経済の不振は世界のなかでも突出している。

1995年を100として2020年の名目GDPを表示すると、日本は91、米国は273、中国は2034(ドルベース)。

米国経済が約3倍になり、中国経済が20倍になった期間に日本経済は縮小した。

参院選で各党が賃金上昇を唱えるが根拠がない。

過去30年間の日本の現実は、経済成長がゼロのなかで、資本の取り分が増加し、労働の取り分が減少してきたというもの。

労働への分配が減ったために労働者の賃金が減少した。

第2次安倍内閣が発足した2012年から2020年までの8年間に、労働者1人あたりの実質賃金は約6%も減少した。

日本は世界最悪の賃金減少国になった。

この賃金減少をもたらした主因が「新自由主義経済政策」である。

「新自由主義経済政策」の特徴は、市場原理を基本に置き、労働規制を撤廃することにあった。

資本は資本のリターンを極大化することを目指す。

資本のリターンを極大化するために最大の威力を発揮するのは労働への分配を減らすこと。

「改革」や「成長戦略」と表現すると聞こえが良くなるが、その内実は、労働規制を撤廃して、労働コストを削減することを後押しすることだった。

「働き方改革」の内実は「働かせ方改悪」だった。

長時間残業は合法化され、残業代ゼロ定額働かせ放題労働制度が拡大された。

解雇の自由化も推進されている。

小泉政権時代に派遣労働が製造業にも拡大され、リーマン・ショック後の不況に際して、多くの労働者が雇止めに遭遇。

所得も住まいも奪われて、多くの労働者が命からがら東京日比谷公園で年末の命をつないだ。

小泉内閣以降の「新自由主義経済政策」が維持され続けてきた。

その延長線上に現在の貧困社会到来がある。

岸田首相はこの流れを変えるかのような発言を示したが、直ちに撤回した。

資本のリターンを高めて労働者の不利益として押し付ける施策は税制にもおよんだ。

1989年度に導入された消費税は拡大の一途をたどってきた。

消費税導入・増税路線の目的はただ1つ。

大資本と富裕層の税負担を一般庶民、労働者に押し付けることだった。

1989年度から2019年度までの31年間に消費税で397兆円が吸い上げられた。

この同じ期間に、法人税負担は298兆円、個人税負担は275兆円も減額された。

消費税導入、消費税増税は財政再建や社会保障拡充のために実施されたというのは真っ赤なウソ。

消費税収の全額が法人税負担と個人税負担の減額に充当された。

それに上乗せして法人税負担と個人税負担が軽減された。

これからも経済成長は実現しない。

人口が減り、技術革新力を失った国は衰退を続ける。

人口が減る最大の理由は労働者の所得環境悪化。

これを是正しない限り、日本の人口が消滅する。

直ちに行うべきことは国民に対する最低保証水準を引き上げること。

高賃金労働者の賃金を引き上げることではない。

国民全体の最低保証ラインを引き上げることだ。

具体的には

1.最低賃金を財政支援によって全国一律で1,500円にする
2.最低賃金に連動して生活保障水準を引き上げ、全員受給を実現する
3.消費税を減税・廃止する

ことが必要。

この方針を明示しているのは

日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の3つの勢力。

すべての主権者が参院選に足を運び、この三勢力に投票を集中することが必要だ。

現在の最低賃金は821円。

年間2000時間労働しても164万円にしかならない。

この時給を1,500円にするとどうなるか。

年間2000時間労働で300万円になる。

164万円の収入を2人合わせても328万円。

300万円なら2人で600万円になる。

この所得環境の変化が社会を変える。

※続きは6月26日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「弱肉強食推進が日本を破滅させる」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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