2024年04月28日( 日 )

「飯塚×ゆめタウン」「小郡×コストコ」進出の影響いかに(後)

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小郡市

優れた交通アクセスから、ベッドタウン&物流拠点化

 コストコ進出が予定されている小郡市は、福岡県の中央部、佐賀県との県境に位置する市だ。南東は久留米市と大刀洗町、西は佐賀県の鳥栖市と基山町、北東は筑紫野市と筑前町にそれぞれ接し、東西約6km、南北約12kmで、総面積は45.5㎢となっている。市の南北方向に西鉄天神大牟田線が走り、市内に7駅(津古駅、三国が丘駅、三沢駅、大保駅、西鉄小郡駅、端間駅、味坂駅)があるほか、東西方向に甘木鉄道甘木線が走っており、こちらは4駅(小郡駅、大板井駅、松崎駅、今隈駅)があり、福岡市や久留米市といった大都市圏への鉄道アクセスに優れている。また、東西方向に大分自動車道が走り、東部の市境付近に筑後小郡ICを擁し、同ICから九州のクロスポイントである鳥栖JCTまで約5km・3分と高速道路アクセスにも優れている。さらに現在は九州自動車道の鳥栖JCTと久留米IC間で「味坂スマートIC(仮称)」の開通に向けた整備も進められており、将来的には高速道路アクセスがさらに向上する見通しだ。

 小郡市の歴史を遡ると、古代・中世から交通の要衝の地としての存在感を示しており、近世・江戸期には薩摩街道や彦山道、秋月街道などのいくつかの街道が通り、その街道沿いに設けられた宿場町を中心として、集落が形成されていた。また、筑後川水系・宝満川によって形成された肥沃な土地を生かし、江戸期には宝満川沿岸一帯が水田化されたほか、多くの堰や用水路が設けられて広範囲にわたる新田開発が進められ、その田園風景は今も息づいている。近現代においては、1924年4月の九州鉄道(現在の西鉄天神大牟田線)開業や、39年4月の国鉄甘木線(現在の甘木鉄道)開業などによって鉄軌道が整備されると、とくに戦後においてはその交通利便性の高さを背景に、西鉄天神大牟田線沿線を中心として市街地開発が進行。77年には、近郊の都市部への人口集中の受け皿となる快適な住宅都市を創出すべく、「小郡・筑紫野ニュータウン計画」が策定され、市の北部において一体的な住宅開発が行われて広範囲にわたる良好な住環境が形成されたことで、小郡市は住宅都市としての性格を強めていくことになった。現在、西鉄天神大牟田線の沿線にあたる市西部で市街地が形成されており、人口(5万9,718人/22年6月1日現在)の大部分はこの市街地エリアに集中している。

中心市街地にあたる小郡駅周辺
中心市街地にあたる小郡駅周辺

 一方で、その優れた交通アクセスから、物流企業や製造業などからの進出先としての注目度も高い。市内3つの工業団地(干潟工業団地、干潟第2工業団地、上岩田工業団地)は全区画埋まっており、大手の物流企業や製造業などが名を連ねている。さらに今年4月には、物流施設大手の日本GLP(株)(東京都港区)が総額約145億円を投じ、小郡市内で地上4階建て、延床面積約9万1,000m2の先進的物流施設「GLP福岡小郡」の開発を行う旨を発表。同施設は複数のテナント(最大8テナント)が入居できる「マルチテナント型」施設をつくる計画で、同社のマルチテナント型の物流施設は福岡初進出。22年7月に着工し、竣工は23年11月を予定している。

 かように小郡市は、地方都市ながらも優れた交通アクセスを武器に、派手さはないがたしかな存在感を発揮している。そしてそれこそが、コストコ進出の決め手となったといえるだろう。

【坂田 憲治】

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