2024年04月29日( 月 )

【福岡IR特別連載89】長崎IR、また墓穴を掘っている

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ハウステンボス イメージ    前回、長崎IRの「区域認定申請書提出」に関する諸々の辻褄の合わない内容を具体的に解説し、その不可解な姿勢の管轄行政と県議会、一部の福岡財界人たちの無責任な態度を批判してきた。

 6月29日、毎日新聞が本件IR基本協定書"公文書開示請求"に関して、長崎県行政の不誠実な対応を厳しく非難し、これを報道している。

 その主たる内容を簡潔に説明すると、大阪IRの管轄行政である大阪市も、すでに崩壊した和歌山IRにおける和歌山県行政も、各々の主たる投資開発運営事業予定者(MGMおよびクレアベスト)との締結済み「本件IR基本協定書」の明確な内容が一般に公に開示され、それぞれのホームページで誰でも見ることが可能なのに対し、長崎IRはなぜこれを公開しないのか?という疑念を問うものだ。

 長崎県行政は他とは異なり、2021年8月に締結した基本協定書は、不誠実なことに、いまだ開示がなく、毎日新聞社からの"公文書開示要請"にも一切応えず、ほとんど黒塗りで提出し、屁理屈を捏ねて拒否しているという内容だ。

 前回も解説しているように、現政権下の"カジノ管理委員会"はすでに「特定複合観光施設区域整備計画法に基づくカジノ事業の免許等の処分に関する審査基準案」を示し、"パプリックコメント"を開始するとしている。それは、とりも直さず、一般に公正性と透明性を広く開示し、意見を求めなければならないとして「法」で定めているものであり、当然、公開しなければならない。

長崎県行政はCAIJ(カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン)との基本協定書をなぜ開示できないのか?

 前述の毎日新聞も含めて、県議会を筆頭に、彼らはいまだどこにも開示せず、どこの誰が、どれだけの金額を投資し、誰が負担するのか?もし最悪な場合の保証、違約金等の条件はどのようになっているのか…。義務と権利、頓挫した場合等の一切を公にしていないし、誰もその回答と説明をしていない。それでよく申請書を提出したものだ。

 重ねて解説するが、要は長崎県行政とCAIJが作成・提出した「区域認定申請書」は、その体を成していないのである。従って、新聞社が公文書開示請求をしても、彼らは一切を表に出せず回答できないのだ。

 つまり単純にいうと「資金調達」のメドがいまだ立っていないのである。誠にお粗末極まりない話である。

 ハウステンボスの親会社であるHISが創業以来の巨額な累積損失(赤字)を出していて、"背に腹はかえられない"現状でハウステンボスの身売りをするかもしれない状態で、本件IRの巨額な投資開発資金などがつくはずもない。

 筆者は最初から重ねて説明しているが、ハウステンボスの三度にわたる閉鎖危機と年間集客計画数673万人など、どこの誰が信頼するのか?誰が考えても簡単に答えが出るのである。ほぼすべての長崎IR関係者もそれを理解している。本当に不可解な今回の「区域認定申請書提出」騒動だ。

 6月22日、長崎新聞は、長崎県行政がハウステンボスIRと長崎空港を結ぶ海上輸送にCAIJ等の事業者が高速船と遊覧船合計4隻を導入する計画だとまことしやかに、これらを報道している。

 まずは、年間673万人もの集客計画は、どこから、誰が、1日何人来て、どのような、裏付けがあり、どのような確信があるのか?

 行政が出した数値を疑いもせず、これらを鵜呑みにするなどは愚の骨頂で、まさに「絵に描いた餅」でしかない!

 簡単な答えありきの逆算での集客計画は出ているものの、巨額な資金調達も何も見えないなかで、なんとも"本末転倒"の話ではないか。

 同新聞社は福岡IR記者会見(3月30日、ホテルオークラ福岡)に参加し、積極的に質問していた。その際、主催者側からの説明で、大都市圏の福岡でもIRの年間集客計画は460万人(海外からは全体の4%以下)だとして、具体的に詳しくこれらの説明を聞いていたのだ。何を根拠として長崎は福岡を上回るのか?報道機関は、これらの疑問を県行政に鋭く突くことが使命である。役人や市議会に忖度している場合ではない。何を基に報道しているのか?彼らの能力を疑うような内容だ。

 本連載「【福岡IR特別連載85】地元・長崎新聞社が酷評 IR誘致の行方は崩壊寸前」でも紹介したが、同新聞社は、先ごろ識者の意見として本件への懸念材料を具体的に報道したばかりだ。本当に"辻褄の合わず"、一貫性がなく、メディアにあるまじき行為ばかりである。

【青木 義彦】

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