2022年01月23日( 日 )
by データ・マックス

米ファンド、サムスン物産、第一毛織の合併阻止へ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

korea エリオット・マネジメントは米国のヘッジファンド運用会社で、創業者ポール・シンガー氏が1977年ニューヨークに設立した会社である。ポール・シンガー会長は、ハーバド大学の法学大学院を卒業した後弁護士になり、その後友人と家族から資金を投資してもらって、資本金130ドルで今の会社を設立した。ポール・シンガー会長は、投資をした会社の意思決定に口を出す、いわゆる物をいう投資家で、キャピタルゲインを追及するタイプの投資家である。
 エリオット・マネジメントは現在全世界で260億ドルの資産を運用していて、順調に成長をした大型ヘッジファンドである。2001年度にアルゼンチンがデフォルトを宣言した後、2008年からアルゼンチンの国債を安値で大量に買い集め、アルゼンチン政府を相手取り13億3,000ドルの訴訟を起こし、勝利を勝ち取ったことでも有名な会社である。

 エリオット・マネジメントは6月4日にサムスン物産の株式1,112万5,927株(持ち株比率7.12%)を保有していることを発表するとともに、第一毛織によるサムスン物産の吸収合併に反対するとの意向を明らかにした。エリオット・マネジメントは現在サムスン物産の第3位の大株主になっただけでなく、その後サムスン物産の株式を買い続けていて、エリオット・マネジメントの動向にサムスングループは神経を尖らせている。
 サムスングループでは、後継者体制を準備するなかで、サムスン物産と第一毛織を合併し、合併会社を持ち株会社にしてサムスングループを支配していく構想であった。しかし、その構想に大きな障害になりかねない存在が現れたのだ。今回の吸収合併の内容は、サムスン物産の1株に対して、第一毛織の株式0.35株を割当てるという内容である。

 エリオット・マネジメントの合併反対の理由としては、サムスングループのオーナー一家の持ち株比率の高い第一毛織に比べ、オーナー一家の持ち株比率の低いサムスン物産の株式はあまりにも低く評価されたと主張している。その根拠として、合併前に算定したサムスン物産の時価総額8兆6,000億ウォンは、サムスン物産が保有しているサムスン電子の株式の価値だけでもその金額になり、これでは、株主の利益に反する決定で、吸収合併の阻止を表明した。
 サムスン物産は、サムソン電子の株式を4.1%、第一企画の株式を12.1%、三星SDSの株式を17.1%、第一家毛織の株式を1.4%、自社株を5.76%保有している。14兆ウォン相当の有価証券を持っている。エリオット・マネジメントはこの保有資産に対する現物配当も要求している。

 今回の一連の動きに対してロイターなどの海外の通信社では、今まで韓国では、財閥に対する非難はあっても、具体的にアクションを起こすことはなかったが、今回はそのような契機になるかもしれないと指摘している。株主の権利よりも、オーナー一家の利益を優先する動きに歯止めがかかる可能性もあると見ている。
 エリオットとの攻防以降サムスン物産株の空売りも急激に増えていて、キャピタルゲインを狙った株式購入にすぎないという意見もある反面、エリオットはサムスングループの構想に挑戦状を叩きつけたと見るむきもある。サムスングループの3世への経営権引継ぎは無事行われるのか、今後の推移に焦眉の関心が集まっている。

 

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