2024年05月10日( 金 )

住宅営業の初期提案の時間と労力を削減 施主の需要見いだし、最適なプラン提案~「My Home Robo」(前)

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安心計画(株)
 代表取締役社長 小山田 隆広 氏

 「働き方改革」の潮流もあり、建設業界はDXへの取り組みを積極的に行い始めた。さまざまなITベンチャーが登場し新たなSaaSを提供するなか、安心計画(株)では1988年の設立より、ソフトウエアを使った住宅メーカーの営業支援を行ってきた。同社が新たにリリースする「My Home Robo(マイホームロボ)」がどのような変革をもたらすのかについて、代表取締役社長・小山田隆広氏にうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)

施主の「建てたい家」をAIが見つけ出す

安心計画(株)  代表取締役社長 小山田 隆広 氏
安心計画(株)
 代表取締役社長 小山田 隆広 氏

 ──貴社では建築ロボアドバイザー「My Home Robo」を開発されました。どのような商品でしょうか。

 小山田隆広氏(以下、小山田) 地場工務店向けの営業支援ソフトです。施主さまにウェブ上でアンケートを送付し、家に関する質問にお答えいただくことで、施主さまお1人お1人に合わせた間取りやデザインをAIが提案します。

 ユーザーとなる工務店営業の方がブラウザからログインし、サイトからアンケートリンクを取得、それをお客さまに送付していただきます。施主さまがそのリンクを開くと、15の質問が提示されます。たとえば、「寝室は1階にほしいか、それとも寝室は2階または3階にほしいか」。この問いに対してお答えいただいたうえで、この質問自体が重要か否か、5段階で評価づけることができますので、このお客さまが「寝室」をどの程度重要視されているのかということも営業側で把握できます。従来のアンケート機能よりもさらに個人に合わせた結果をつかむことを可能にしており、このアンケートではこだわりや立地に求める条件なども入力していただくため、お客さまの回答に準じて提案されたプランだけでなく、過去に同じような条件提示をした別のお客さまのプランを知ることもできます。単なるYes/Noの回答だけでは見いだせなかったプランについて、お客さま自身も気づくことができるのです。

 ──開発の経緯についてお聞かせいただけますか。

 小山田 当社では設立以来、CADやCGシミュレーションのソフトを提供しています。さまざまな種類のソフトを開発してきたなかで、今回の「My Home Robo」の大きな特長の1つとなったのは、(株)Lib work(熊本県山鹿市)さんと協業で開発したことです。

 Lib workさんは戸建住宅の企画・販売を手がけられており、以前から当社の商品を使っていただいていました。施主さまと実際にお会いして、営業を行っていらっしゃるのですが、とくにウェブマーケティングにおいて強みをもっていることがLib workさんの特長です。

 住宅展示場に来られるお客さまにはさまざまな方がいらっしゃいます。家を建てたいという思いやプランをしっかり持った方もいれば、そこまで思いが強くないものの、好奇心から足を運んでみたという方もいらっしゃいます。また、熱量の濃淡だけでなく、お客さま自身も自分の好みを理解できていないということもあります。趣味嗜好というのは非常に難しい分野で、白黒だけでなくグレーが存在し、またグレーのなかにも黒寄りのグレー、白寄りのグレーがあります。このような状態からお客さまが希望する家のイメージをバランス良くつかむには先天的な能力もあるため、必ずしも教育して身に付くというわけではありません。また、お客さまの趣味嗜好や、営業側の能力など条件が毎度変わりますので、すべてを包含したマニュアル化ができません。完全に機械化することもできず、人間においてもまた言語化ができない。そこをAIで橋渡しすることにしました。「Lib workさんの優秀な営業マンのノウハウをAIに学習させよう」というところから今回の企画がスタートしたのです。

 262の法則といわれるように、優秀な人物の数は少なく、半数以上を普通の人が占めるかたちで組織は構成されます。ただ、これを悲観的に捉えるのではなく、むしろ「『普通の人』を1人でも多く引き上げることができれば、他社に負けない優秀な組織をつくることができる」と捉えることができるとも考えられます。

 ──このソフトはどのような面で役立っているのでしょうか。

 小山田 ソフト開発当初、お付き合いのあった工務店の方からお話を聞かせていただきました。そのなかで聞かれたのが「営業手法とコストのジレンマ」でした。大手メーカーは一般の方々にも認知度の高いブランドをもっており、1人ひとりに合わせた住宅をつくるのではなく、そのブランドのなかから選んで建てるという手法を取ることができましたが、地場工務店の規模ではできません。そこで強みとなるのが「お客さまとの近さ」です。何かあったときに近くにいるという安心感です。1人ひとりとの対話を通して顧客の好みや生活における悩みを聞くことができます。しかし、こうして注文を「フルオーダー」で受け、自由に好みの住宅を建てるという部分で差別化を図りたいと思うものの、当然ですが手間暇がかかることは避けられません。

(つづく)

【文・構成:杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:小山田 隆広
所在地:福岡市博多区博多駅前3-22-8
    朝日生命博多駅前ビル8F
設 立:1988年3月
資本金:1億円
売上高:(22/1)10億4,705万円
マイホームロボ公式サイト:https://my-homerobo.com/
https://my-homerobo.com/


<プロフィール>
小山田 隆広
(おやまだ・たかひろ)
北九州市出身。保険会社や海運会社勤務を経て、1984年に富士通代理店として独立、建設原価会計システムの販売を開始。88年に安心計画(株)を設立し、住宅CADやCGシミュレーションソフトによる工務店や住宅メーカーの営業支援を展開。最新のITによる支援サービスを常に提供し続け、現在に至る。2016年には盛和塾「稲盛経営者賞」を受賞。趣味は読書(古典・歴史)。

(後)

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