2024年04月24日( 水 )

【中国総領事】100年に一度の世界変革と中国の発展(1)

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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

律桂軍中国駐福岡総領事

 1972年の日中国交正常化から、今年で50周年を迎える。変革期にある現在世界情勢について中国はどう認識しているか、今後どのような日中関係を望むのかについて、中国駐福岡総領事の律桂軍氏より「100年に一度の世界変革と中国の発展―新たな時代の中日関係構築に向けて」と題する記事を寄稿していただいたので掲載する。

 今年は中日国交正常化50周年にあたり、中日両国の各界の方々が、いかにして過去を総括し未来を切り拓くべきかについて模索しています。昨年10月、習近平国家主席と岸田総理大臣は電話会談を行い、国交正常化50周年を大きなきっかけとし、新たな時代にふさわしい中日関係を築いていくという点で重要な合意に達し、双方の努力目標を明確にしました。この合意を実行に移し、新たな時代にふさわしい中日関係を築くことは、次の世代の人々にとって非常に重要な意味をもちます。

1.中日国交正常化50周年を機に注目高まる中日関係の重要性

 この50年間、中日間の協力関係はますます深まってきました。日本にとって中国は(15年)連続で最大の貿易相手国であり、対中輸出入ともに日本の貿易額の20%以上を占めています。2021年の二国間貿易額は過去最高の3,714億ドルに達し、第2位から第4位の貿易相手国の対日貿易総額を上回る見込みです。中国で投資や事業を行う日本企業は3万社を超え、年間5,000億ドルの売上高をあげています。また、両国の友好都市は250組を超え、新型コロナウイルス流行前には、両国間の往来はのべ1,200万人に達しました。中国大陸からの訪日者数は1,000万人近くにのぼり、訪日外国人全体に占める人数では30%、消費額は36.8%を超えています。さらに中日両国は、国際経済やG20、APEC、東アジア地域協力、朝鮮半島の核問題などについて緊密な意思疎通と協調を続けてきました。

 こうした協力の成果は、日中両国および両国の人々にたしかな恩恵をもたらし、両国は互いに親しい関係を築いてきました。また経済的な深い結びつきが、お互いを「切り離す」ことのできない関係にしています。

 中日関係の意義は二国間にとどまらず、地域全体、世界全体に影響し、それが日増しに拡大しているというのが、基本的なコンセンサスとなっています。中日友好協力を続け、発展させることは、両国および両国の人々の根本的な利益にかなうだけでなく、アジア、ひいては世界の平和、安定、繁栄に資することなのです。

2.100年に一度の世界変革と、新たな時代の中日関係構築

 中国の習近平国家主席は、「今、世界は、この100年に経験したことのない局面に立っている」と繰り返し指摘しています。大変局の下、世界や地域には、5つの大きな危機や課題が存在しています。

 第1に、新型コロナウイルスの流行です。この流行はすでに3年目に入り、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、全世界で5億6,412万人以上が感染、637万を超える人々が死亡しています。新型コロナウイルスの流行は人類史上初めてですが、これが最後の流行ではないでしょう。

 第2に、ウクライナ危機です。ウクライナ危機は中国にとって、目にしたくないものです。この事態は、国と国の関係は武力衝突に持ち込んではならないこと、衝突や対立は誰の利益にもならないこと、平和と安全こそ国際社会で最も尊い宝であることを改めて示しています。中国は常に平和を訴え、戦争に反対してきました。それが中国の歴史的、文化的な伝統なのです。我々は常に、何が正しいのかを自分で判断し、国際法や、広く認められた国際関係の基本的なきまりを守るよう提案しています。各国は、ロシアとウクライナが対話を行い、平和という結論を導き出せるよう共に支援しなければなりません。また、アメリカやNATOもロシアと対話を行い、ウクライナ危機の背後にある問題を解き明かし、ロシア・ウクライナ双方の安全保障上の懸念を取り除く必要があります。

 第3に、気候変動です。工業文明に移行してから、人類は物質的に大きな豊かさを生み出す一方、天然資源をむさぼり、生態系のバランスを崩し、人類と自然の根深い対立を引き起こしてきました。近年では、気候変動、生物多様性の喪失、砂漠化の進行、異常気象の頻発が、人類の生存や発展にとって深刻な課題になっています。

 第4に、経済の悪化です。新型コロナウイルスの流行、ウクライナ危機、経済制裁などが絡み合った結果、グローバルな産業チェーンやサプライチェーンが乱れ、コモディティ価格が上昇を続け、エネルギー供給が逼迫するなど、経済復興の道のりが不確実性を増しています。世界的な低インフレは大きく変化し、複合インフレのリスクが非常に高まっています。主要経済国の急速な利上げが、深刻なマイナスの波及効果をもたらし、世界経済や金融の安定をおびやかしています。世界銀行が6月7日に発表した経済見通しでは、22年の世界経済の実質成長率は2.9%に低下し、21年の5.7%を大幅に下回ると予測しています。

(つづく)


<プロフィール>
律 桂軍
(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

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