2024年03月29日( 金 )

【中国総領事】100年に一度の世界変革と中国の発展(4)

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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

 1972年の日中国交正常化から、今年で50周年を迎える。変革期にある現在世界情勢について中国はどう認識しているか、今後どのような日中関係を望むのかについて、中国駐福岡総領事の律桂軍氏より「100年に一度の世界変革と中国の発展―新たな時代の中日関係構築に向けて」と題する記事を寄稿していただいたので掲載する。

 (3)中国と日本、中国と九州では発展の段階が異なるため、経済の補完性が非常に高く、互いに発展しあうことができます。35年長期目標を達成することで、中国の発展は日本に多くのメリットをもたらし、新たな時代の中日協力のチャンスも増えることでしょう。

中華人民共和国駐福岡総領事 律 桂軍 氏
中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

    第1に、市場のチャンスです。中国の人口14億人のうち4億人以上が中間所得層です。世界経済にとって最大の、最も潜在力のある消費市場であり、さらに巨大な伸びしろを秘めています。今後10年の商品輸入額は累計22兆ドルを越える見込みで、これが世界経済に新たな活力をもたらし、日本経済界による中国への協力においても多くのチャンスを提供することでしょう。

 第2に、産業チェーンやサプライチェーンで協力するチャンスです。中国は世界で最も整った大規模な工業システムをもち、世界中のサプライチェーンを力強く支えています。新型コロナウイルス感染症による苦しい時期には、世界各国に向けて感染対策用品を大量に輸送し、グローバル経済を安定させるバラストの役割をはたしました。中国の産業チェーン・サプライチェーンの近代化がさらに進むにつれ、従来型産業のハイエンド化、インテリジェント化、グリーン化が実現し、多くの新たな産業チェーンが生まれるでしょう。日本は、産業チェーンにおいては独自の優位性と強みをもち、サプライチェーンにおいては中国と高度に融合しています。中国が産業チェーン・サプライチェーンの最適化を進めるうえで、中日両国が「チェーンの協力」を強化することは、両国それぞれの産業チェーン・サプライチェーンの安全性を高めるだけでなく、東アジアの安定した発展をも促すこととなるでしょう。

 第3に、イノベーションと協力のチャンスです。中国は人工智能(AI)、集積回路、生命・健康といった先端分野で国家レベルのプロジェクトを実施するほか、企業の技術革新力を引き上げ、イノベーションの主体としての地位を高め、産官学の高度な連携を推進し、企業の研究開発投資を奨励します。日本企業は中国の優遇政策や優秀な人、市場データなどの資源を生かし、中国企業と協力してハイテク分野の共同研究を行い、共に進歩できるでしょう。

 第4に、環境保護協力のチャンスです。中国は低炭素型産業を推し進め、気候変動への対応など生態環境保護についての国際協力をリードするとともに、60年までに「カーボンニュートラル」を実現する目標を掲げています。環境先進国である日本も50年までの「カーボンニュートラル」を目指しています。共通の目標と課題に向け、中日両国が環境分野でさらなる協力を進めるポテンシャルは、極めて大きいといえるでしょう。

 第5に、第三国市場での協力のチャンスです。中国は引き続き対外開放のレベルを高めていきます。「一帯一路」の共同建設という大きな枠組みのなかで、また今年初めに「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)が正式に発効したことにより、中日両国は東アジアの第三国市場での新たな協力のチャンスと、より多くの有利な条件をもつことになりました。

 中日国交正常化50周年を迎えるにあたり、九州各界の皆さまが、健全で安定した中日関係の重要性をいっそう深く認識され、また中国の発展が平和、開放、Win-Winの発展であることをいっそう深く認識されて、新たな時代にふさわしい中日関係構築のために貢献されることを心から願っております。

(了)


<プロフィール>
律 桂軍
(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

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