2024年03月29日( 金 )

34年を経て、調査結果が国の被爆者認定方針を変える~増田善信博士

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 日本ビジネス・インテリジェンス協会は28日、第177回ビジネス・インテリジェンス情報研究会を東京で開催した。

 最初に発表を行った増田善信氏(元気象庁気象研究所研究室長・元日本学術会議第12・13期会員、理学博士)は、広島原爆後の「黒い雨」の降雨範囲を分析した「増田雨域」などで知られる。増田氏は1987年に従来想定されていた降雨範囲の約4倍とする現地調査結果を発表、それから34年の月日を経て、同調査結果は、広島地裁(2020年)および同高裁(21年)が、原告の健康被害の訴えに対し、訴訟判決において「原爆の投下後に黒い雨が降った蓋然性があった」とし、原告84名全員を被爆者と認定させるに至る有力な根拠となったとされる。政府は21年7月26日、広島高裁の判決を受け容れ、原告を被爆者と認定するとともに、上告をせず、原告全員に被爆者健康手帳を交付する考えを示した。

 増田氏は本報告において、米国が実施した1954年のビキニ環礁水爆実験による異常現象(資料2~3ページ)などに早くから取り組んできた自身の経歴などを紹介したほか、とくに広島高裁の判決を画期的なものと評価(資料18ページ)したうえで、政府が健康被害との因果関係を認めるに至った経緯などについて紹介した。最後に、政府が昨年策定し、今年4月から実施している救済対象被爆者の認定に関する新たな指針について、広島高裁は疾病の有無を問わなかったのに、がんなど11種類の疾病の発症を要件としていることを問題点として指摘した。

YouTube「黒い雨はどこまで降ったか~気象専門家増田善信の約束~」

日本ビジネス・インテリジェンス協会提供
日本ビジネス・インテリジェンス協会提供
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 なお、同日の研究会のプログラムは下記の通り。

1.『34年後に甦った黒い雨の増田雨域』増田善信・理学博士
2.『生産性向上のための具体的取組み』平石圭太・経営コンサルタント
3.『大阪から見た日本の行方』楢崎宣夫・BIS理事、関西支部長
4.『ウクライナ危機とエネルギー問題』渋谷祐・新ジオポリ代表
5.『タイ運河建設とASEANプラス・ワン』明川文保DEVNET 総裁
6.『TICAD とアフリカ開発』杉岡玲子アフリカ日本友好協会代表理事
7.『新商品 オーガニック・ライス紹介』山本成寿・エムワールド・オンアース社長
8.『新商品 電力削減テープ紹介』鈴木健compom factory社長

【茅野 雅弘】

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