2024年04月16日( 火 )

【BIS論壇No.388】TICAD8と日本のグローバル経済戦略

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は8月29日の記事を紹介する。

西アフリカ チュニジア 首都 チュニス イメージ    日本が1993年に開始したTICAD(アフリカ開発会議)第8回会議が、西アフリカのチュニジアの首都チュニスで今月27~28日に開催された。主催者の岸田文雄首相はコロナに感染したため、代理として林外務大臣を派遣。岸田首相はオンラインで参加した。

 岸田首相は28日の閉会式で採択されたチュニス宣言に関し、「宣言はポスト・コロナのアフリカの持続的な成長に向けた道標になる」と述べた。さらに、「国際法に従い、紛争の平和的解決を図らなければならない」と、暗にロシアのウクライナ侵攻を念頭に宣言に盛り込んだ。

 経済協力分野では低調な対アフリカ投資をテコ入れすべく、今後3年間に官民で300億ドル(約4兆円)規模を目指す。その核として「アフリカ・グリーン成長イニシアティブ」を唱え、官民の40億ドル(約5,400億円)の投資により、気候変動対策やスタートアップの育成に注力する。

 筆者が学術顧問として参画している国際アジア共同体学会(ISAC)では、立命館大学の環境問題専門家の周瑋生教授を中心に「アジア・グリーンエコノミー都市連合」構想が検討されている。この機会にTICADに協力しているUNIDO(国連工業開発機構)、JETRO(日本貿易振興機構)などとも協力し、アジア・グリーンエコノミー都市連合をアジア・アフリカグリーン都市連合に拡大して、日本が投資する40億ドルの有効活用を検討することを提案したい。

 TICAD8会議への参加国は前回から5カ国減り、48カ国。首脳級の出席は前回の42人から20人と半数に激減。日本のアフリカでの存在感は薄まり、アフリカの日本への関心は低下しているという。アフリカは10億人の人口が2050年には2倍以上の25億人に増加。世界の4分の1の人口を占めるとみられている。若年人口も多く、さらに携帯などIT分野でも発展が著しい。アフリカは「最後のフロンティア」と呼ばれる成長市場だ。

 外交・安全保障分野では、アフリカ各国は国連加盟国の4分の1を占める一大勢力だ。JETROの21年の統計によれば、日本の世界貿易における立場は輸出入とも3.5%に激減。輸出は中国15.5%、米国8.1%、輸入は米国12.7%、中国12%に対して大きな差をつけられている。1990年代に世界のGDP(国内総生産)の16%を占めていた日本は、2020年には6%弱と10%も沈下。5%に落ち込むのも時間の問題とみられている。

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 先日の講演会で評論家の森田実氏は、日本の政、官、財界、学会などが日本の世界における存在感の落ち込みに危機感を抱かず、井の中の蛙、ぬるま湯に浸っている現状に警鐘を鳴らされていたが、筆者もまったく同感である。このままでは早晩、ASEAN諸国からも相手にされなくなるのではと危惧される。日本人の奮起を期待したいが、無理だろうか。

 一方、中国は広域経済圏構想「一帯一路」を基盤に、未来の大国アフリカ54カ国への融資を強化している。21年に400億ドルの融資を表明。着々と手を打ちつつある。アフリカで日中が競い合うのではなく、協調する方策はないのか。日本の長期的観点に立った戦略の構築が望まれる。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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