2024年05月16日( 木 )

シノケンがMBOで非公開化へ、篠原社長の将来ビジョンとは

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

1,000億円企業つくった 稀代の経営者・篠原氏

シノケンのアパート(HPより)
シノケンのアパート(HPより)

    今回の決断について篠原英明氏は、「当社グループをさらに魅力的な企業へと成長させ、中長期的な企業価値の向上を実現するためには、短期的な業績変動等に過度に捉われず、迅速な経営判断、中長期的な経営戦略に基づいた積極的な投資を遂行するとともに、既存事業の発展的な再構築の遂行が必須であると考えるに至った」(シノケングループ資料)のだという。

 篠原氏は、投資用不動産の業界では誰もが一目置く経営者である。これまで耐震偽装問題やリーマン・ショック、その後の資金繰り逼迫など、何度も危機に瀕しながらも飛躍を遂げてきた。自社物件へのガス供給などアパートを軸に据えた多角化、それによる規模拡大は、投資用不動産業界における経営手法の「お手本」となった。

上場維持のメリット すでになくなっていた?

 ここからは推測になるが、篠原氏は随分前から「すでに上場メリットはない」と判断していたのではないだろうか。リーマン・ショック後の資金調達では、日本振興銀行とのつながりが深かったNISグループへの第三者割当増資を行ったほか、これまで上場企業であることを活用した事例もあったが、不動産市況が回復した後の14年に子会社化した(株)小川建設の買収額は26億円超(アドバイザリー費用を含む)におよんだが、自己資金と借入金で賄われた。

 もちろん上場企業であることで、採用や銀行融資の面では有利に働いたことも少なくないだろう。ただ、これはあくまで上場メリットの副産物で、副残物にはデメリットもあった。上場していると、メディアから叩かれやすいのだ。「かぼちゃの馬車事件」「TATERU問題」などが取り沙汰された2018年、同社も週刊誌で取り上げられることとなる。投資家(客)と銀行、それぞれに契約書が存在し、それが二重契約にあたるというもので、報道によって株価は一時ストップ安となった。当時からシノケングループのアパート融資に積極的に関わってきた西日本シティ銀行との関係はその後も継続し、いつの間にか問題は収束したが、そもそも上場していなければ、これほど大きく週刊誌に報じられることもなかっただろう。

 シノケングループは22年12月期第2四半期のアパート販売事業(不動産セールス事業)において、前年同期比46.9%増となる売上高257.5億円、同46.5%増となるセグメント利益21.7億円を計上するなど、一般的にサラリーマンへのアパートローンは厳しい環境が続くなかでも、業績は好調に推移している。また、西日本シティ銀行・副頭取の入江浩幸氏が17年から社外取締役に就いていることからも、「引き続き西日本シティ銀行との関係は良好である」ことがうかがえるが、今回のTOBおよびMBOの資金は新生銀行らから調達されることを考えると、今後も関係を維持できるかは不透明だ。

● ● ●

 篠原英明氏は今年57歳となった。今回の手続きにおいて多くの株式は手放すこととなり、ある意味イグジットという見方もできる。また、シノケングループを率いる後継者についても、悩みはあっただろう。社外から優秀なプロ経営者を招聘するためにも、インテグラルをパートナーとして選んだのではないだろうか。創業から30年以上、何度も危機を乗り越え、シノケングループを1,000億円企業に育て上げた稀代の経営者・篠原英明氏は、今回のTOBおよびMBOを経た後に、どのような将来ビジョンを見据えているのだろうか――。

【永上 隼人】

  • 1
  • 2

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事