2024年06月16日( 日 )

農地転用は開発用地捻出の“切り札”となるか?(3)

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福岡県下で進む農地転用、その多くは「住宅」に

 福岡県に目を移すと、農地(田、畑、採草放牧地)の利用面積が緩やかな減少傾向にあるのに対し、宅地(住宅地、工業用地、その他の宅地)の利用面積は拡大傾向で推移している。

福岡県下の農地転用の許可・届出の状況
福岡県下の農地転用の許可・届出の状況

 今年3月に福岡県が発表した「令和3年度土地利用動向調査」によると、2004年度に9万913haだった農地は、14年度には8万4,907haとなり、20年度には7万9,767haまで減少している。04年度から20年度までの17年間で減少した農地の総面積は1万1,146haとなっており、福岡県(総面積49万8,652ha)全体の約50分の1、福岡市(総面積3万4,339ha)の約3分の1の規模の面積の農地が消失した計算になる。その一方で、宅地は04年度の7万1,341haから14年度には7万4,426haとなり、20年度には7万6,057haまで拡大。17年間で増加した宅地の総面積は4,716haとなっており、減った農地の約4割分にあたる。

 さらに、併せて農地転用の許可・届出の状況を見ると、農地の宅地化が進んでいることが一層顕著になる。農地法に基づく農地転用の許可・届出件数は、04年の4,396件から11年度の2,841件まで減った後に再び増加し、13年度には3,609件まで回復。その後はまた減少傾向となり、20年度には2,401件となっている。この17年間の総合計では福岡県下で5万9,116件の農地転用の許可・届出が行われており、年平均では3,477件。この間に農地転用された総面積は7,454haとなっている。前述した農地減少分の66.8%が農地転用された計算だ。

 福岡県下の市町村ごとの農地転用の状況を見ると、19年度に農地転用の許可・届出の件数が最も多かったのは福岡市の415件で、次いで久留米市の402件、北九州市の315件、糸島市の125件、苅田町の105件と続く。なお、件数と面積の順位は必ずしも一致せず、面積順でいえば1位・2位は福岡市の29.8ha、久留米市の27.4haと件数のランキングと同じだが、3位にはみやこ町の25.9ha(件数:31件)、4位は北九州市の15.6haで、5位は糸島市の15.4haだ。

 20年度では、件数1位は福岡市(383件)と前年度と変わりないが、前年度2位だった久留米市は0件でランク外に。代わって件数2位に浮上したのは北九州市の176件で、以下、朝倉市の125件、糸島市の120件、筑紫野市の99件と続く。面積順では、北九州市が80.7haと圧倒的な1位で、2位は福岡市の23.9ha、3位は小郡市の18.3ha(件数:72件)、4位・朝倉市14.7ha、5位・糸島市13.3haとなっている。

 転用目的別の面積を見ていくと、自治体によってバラつきはあるものの、「住宅」が最も多く全体の約3割を占めている。次いで、「その他の業務」「商業サービス等」「鉱工業」の順となっている。
 実際に、そのすべてが農地転用による開発ではないが、福岡県下では人口増を背景とした需要に後押しされるかたちで、都市部およびその周辺部において住宅地開発が旺盛だ。福岡市では、西日本鉄道(株)の分譲住宅「コットンヒルズ」シリーズや、久留米市では東宝ホーム(株)の「サニーガーデン」や辰巳開発(株)の「ポコタウン」シリーズ、北九州市では大英産業(株)の「サンコート」シリーズ、糸島市では(株)へいせいの「オリーブガーデン」など、各エリアとも複数の企業による10区画以上の住宅地開発が活発に行われている。

各地で農地転用からの住宅地開発が相次ぐ(写真は福津市津屋崎)
各地で農地転用からの住宅地開発が相次ぐ
(写真は福津市津屋崎)

【坂田 憲治/代 源太朗】

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