2024年05月20日( 月 )

農地転用は開発用地捻出の“切り札”となるか?(3)

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開発着手までに要件緩和も進む

 農地を耕作以外の目的で使用する、つまり農地転用を行うには、都道府県知事、または農林水産大臣が指定する市町村の長の許可が必要となる。そして、許可を得るためにはまず、農業委員会への申請書の提出や同委員会内での協議が求められる。農業委員会は、各市町村に置かれる行政委員会であり、農地法に基づく農地の売買・賃借の許可、農地転用に関する意見具申などの農地事務を担当。農地転用を行うには同委員会との調整が不可欠となる。農業委員会と申請者との調整後、同委員会が提出された申請書に意見を加えて、各都道府県知事、または農林水産大臣が指定する市町村の長に送付。許可が下りると、申請者に通知される。さらに、農地の種類やその規模によっては、農業委員会ネットワーク機構(農業会議)から意見聴衆も行わなければならない。このように手順が多岐にわたるため、農地転用には相応の時間と労力を費やすことになる。

農地転用の許可の流れ
農地転用の許可の流れ

 農地転用の許可が下りてからも、今度は地目の変更手続きや関連事業者の手配などが控えており、開発に着手できるまでに1年以上を費やすケースも珍しくない。インバウンド熱収束やコロナ禍で社会情勢が一変し、ホテル開発の停滞や中止が相次いだように、状況次第では計画が白紙に戻される場合もある。

 開発困難な市街化調整区域から、開発しやすい市街化区域への区域区分の見直しによる土地区画整理事業などで、大規模な宅地開発やハコモノ(箱物)ビジネスの展開を考えている企業や市町村にとって、農地転用に係る手続きの簡素化は大願だったといえよう。

 農地転用に係る手続きの簡素化については、16年までの複数回にわたる農地法の改正を通じて実現された。たとえば、農地転用が行われる地域の実情を理解していない国が判断を下す場合、時間がかかり企業誘致に支障が出る可能性がある。こうした事態を避けるために、許可権者は農林水産大臣から各都道府県知事、農林水産大臣が指定する市町村の長へと移管された。市街化区域の農地転用については、農業委員会への届出で済み、原則許可される。また、22年には農地転用許可申請に必要な添付書類の一部が廃止されたほか、「職業欄」の記載が不要になるなど、手続きはさらに簡素化された。

 こうして要件の緩和も進み、農地を農作物の加工・販売施設に転用するなどの動きが活発化したことで、農家の収益性向上、新規就農者の増加につながると期待された。だが、前述したように荒廃農地面積は拡大を続けている。深刻なのは、20年時点で荒廃農地面積の約7割が農地としての再利用が見込めない再生利用困難な農地という点だ。

 再生利用困難な農地は、農地として復元しても継続して利用することが困難とされており、農地転用を通じた企業による宅地開発や、地方自治体による産業用地造成などが、利活用の最適解なのかもしれない。

【坂田 憲治/代 源太朗】

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