「からつ塾」は、佐賀県唐津市を本拠とする民間塾だ。活動内容は、大学教授や専門家を呼び、市民らに講演を行うというもの。唐津の地で18年間、これまで実に148回の講義を催してきた(2022年9月5日時点)。「からつ塾」には常連で通っている市民も多くおり、筆者の受講した講義にも多数の参加者がいた。
そんな「からつ塾」の発起人の1人であり、かつて同塾の代表であった福岡大学名誉教授・大嶋仁氏(以下、大嶋)に、今回は話を聞いた。

大嶋 仁 氏
──「からつ塾」を始められた経緯を教えてください。
大嶋 私たちの住んでいる唐津市には、大学がありません。そのため、一般市民が学問に触れる機会が極めて少ないのです。
一方で、からつ塾を始める以前から、この町には知的な関心のある方が多くいると感じていました。だからこそ、そういった市民が学べるように、大学教授などを呼べる場をつくろうと思ったのです。
「からつ塾」が民間塾である理由は、公共機関が絡むと、私たちが呼びたい人が呼べなくなるからです。そのため、外部からの援助に頼らず、来ていただいた方から聴講料を集めて運営しています。
──名前の由来を教えてください。
大嶋 江戸時代、日本全国には私塾がありました。唐津でも藩校のほか、民間塾が盛んでした。武士だけではなく、商人なども勉強できる場があったのです。私たちはそのスタイルを受け継ぐかたちで「塾」という名前をつけました。
あくまで民間の営みであるため、「唐津市」塾ではなく、「からつ」塾というネーミングになっています。
──18年、どういった思いで続けてきましたか。
大嶋 私たちとしても、色んな教授と知り合いたいという気持ちがありました。教授を呼んで、直接会って話を聞きたい。私たちが個人の学びとして、関心のある人を呼んでいるのです。
とはいえ、講義する分野のバランスも大事だと考えているため、招聘する教授や講演の内容は自然科学から文学まで、非常に幅広いです。これは、知識というものは常に総合的であるべきだと考えるからで、運営委員(現在は6名)はそれぞれさまざまな分野に興味があり、自分はこういう人が呼びたいと提案し合って決めるからです。
今後コロナが終息すれば、遠方の教授なども呼びやすくなると思います。これからも「からつ塾」ではたくさんの先生を招いて、講義を行っていきたいと思っています。
次回は10月1日(土)、午後3時からJR東唐津駅前の唐津ビジネスカレッジで、第149回からつ塾「シルクロードに住む人々 ~中国新疆のウイグル族などについて~」という講座が開催される。登壇するのは九州大学名誉教授で元九州シルクロード協会会長・中田稔氏。参加費は1,000円(学生500円、中学生以下無料)となっている。
▼関連リンク
唐津市の民間塾「からつ塾」
【吉村 直紘】