2024年05月16日( 木 )

時代と環境の変化に合わせながら、お客様第一主義を貫いてきた老舗

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)アキラホールディングス
(株)アキラ水産

 福岡を代表する総合仲卸(株)アキラ水産。鮮魚を取り巻く市場環境・法制が変わるなか、(株)アキラホールディングスを設立し、グループ化を進めている。ISO22000認証の取得、輸出プラットフォームの構築などにより、加工・通販、さらには海外販売の体制を強化している。軸となるのは、お客様第一主義という創業以来貫いてきた理念とその実践だ。

グループ化で競争激化に対応

1918年創業の「明百貨店」
1918年創業の「明百貨店」

 創業100年を超える老舗にして、福岡市中央卸売市場の鮮魚市場で取扱量トップの総合仲卸(株)アキラ水産。現在の柳橋連合市場で「明百貨店」を開業したのが始まり。安部泰宏アキラホールディングス代表取締役CEOは1960年代に「これからスーパーマーケットの時代がやってくる」といち早く見抜き、即座に商品の品ぞろえを量販店向けに変更し、時代のニーズに合わせて業容を拡大させてきた。

 2020年1月に(株)アキラホールディングスを設立し、ホールディングス制に移行、グループ6社を統括する。アキラ水産を主軸に、マグロなど鮮魚仲卸の(株)コウトク水産、高級鮮魚仲卸の(株)安部水産、冷凍、塩干物販売の(株)一心、鮮魚の小売・加工・通販の(株)アキラ・トータルプランニングおよび水産物直販の(株)四季海鱻(しきかいせん)で構成され、仲卸業を中心として事業の裾野を広げている。

 鮮魚仲卸業でホールディングス制をとる企業は全国でも多くないという。アキラグループの対応は20年6月に予定された改正卸売市場法の施行に備えたものであった。同法は自由化による競争を促進するものであり、取引のルールが緩和され、たとえば仲卸業者以外の第三者への販売が可能となった。新たな形態のビジネスチャンスが生まれ、新規参入により競争が激化することが予想されたなか、安部氏は「想定外の事態に直面した場合でも迅速かつ的確に対応できる」よう、ホールディングス制への移行を決断した。

品質と安全管理を強化

(株)アキラホールディングス ​​​​​​​代表取締役CEO 安部 泰宏 氏
(株)アキラホールディングス
代表取締役CEO 安部 泰宏 氏

 21年9月に鮮魚の仲卸業を行うグループ5社が食品安全マネジメント規格のISO(国際標準化機構)22000認証を取得した。九州の水産仲卸、福岡市中央卸売市場鮮魚市場では初のケースという。なお、同グループは以前よりISO認証の取得に積極的で、アキラ水産は鮮魚仲卸として全国初となる品質管理規格のISO9001を06年に取得していた。

 海外市場で受け入れられよう品質および食品安全管理体制も整える一方で、輸出販路を拡大するための体制構築にも取り組んでいる。輸出実績の豊富な豊洲市場仲卸の築地太田および日本通運と連携し、輸出プラットフォーム「グローカル・フード・マーケット・コンソーシアム」を進めており、21年8月、農林水産省の「令和3年度海外フードバリューチェーン再構築緊急対策事業」として採択された。26年には輸出額30億円を目指している。同グループのジャパンブランド鮮魚が海外でも人気を博することは間違いない。

市民の魚離れを食い止める

(株)アキラ水産 代表取締役社長 上田 浩祐 氏
(株)アキラ水産
代表取締役社長 上田 浩祐 氏

 水産業を取り巻く環境は変化し続けている。漁獲高の減少、若年層の「魚離れ」などは深刻だ。同グループとしても、顧客をめぐり「どうすれば魚を食べてもらえるか」「どのような状況で魚を食べるのか」という意識を常にもっている。

 アキラ・トータルプランニングを中心に加工・通販事業を強化し、資源利用の効率化と需要掘り起こしに取り組んでいる。安部氏は「魚が売れないのは調理の手間がかかるから。その面倒なところを我々がすべてやれば、きっと喜んで食べてもらえる」という考えから、魚をさばいて卸す1次加工、2次加工からパッキングの3次加工まで手がけるようになった。スーパーのほか寿司店にも提供している。今後も加工事業を増やすため、古賀工場の新設、福岡市の市場内の自社加工場のリニューアルにより、生産・加工能力を増強した。

 顧客の目線に立ったオリジナル商品の開発にも取り組んでいる。21年6月に自社サイトで販売を開始した「博多幸盛り」(冷凍の刺身セット商品)は同年11月に第32回全国水産加工品総合品質審査会において水産庁長官賞を受賞。昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大により外食の機会や都市間の移動が制限されるなか、福岡の魚を全国の家庭で楽しんでもらおうというもので、売れ行きは好調だ。

 社会活動では、安部氏は福岡魚食普及推進協議会の前会長として、長浜鮮魚市場の「市民感謝デー」の実施にこぎ着けるなど、魚食文化の普及に努めている。

 同グループの経営理念は「常にお客様志向の経営姿勢で、未来の食文化の構築に力を注いでいく」。安部氏は父・篤助氏が「ほとめく」(博多弁でおもてなしの意)ことが好きで、顧客を大事にするのを見てきた。上田浩祐アキラ水産代表取締役社長も「グループにとって最も重要なのは安部イムズの継承」とし、顧客重視の姿勢を受け継いでいる。そのうえで、今後、企業には健康経営が求められるとして、「従業員の幸福度の追求に努めながら、企業としての健康度を高める」としている。

 同グループは創業以来の経営理念である「お客様第一主義」を実践するための取り組みの一環として、「SDGs宣言」を21年3月に行った。「海の豊かさを守ろう」など4項目の実現に取り組むとしている。同グループは今後も、顧客と社員を大事にしながら、日本の魚食文化を支え続けていくだろう。

【茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
(株)アキラホールディングス

代 表:安部 泰宏 
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-701
設 立:2020年1月 
資本金:4,850万円
TEL:092-711-6601 
URL:https://www.akirasuisan.co.jp


(株)アキラ水産
代 表:上田 浩祐
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-711
設 立:1969年9月
資本金:4,850万円
TEL:092-711-6601
URL:https://www.akirasuisan.co.jp

関連記事