2024年05月09日( 木 )

「技術者はかっこいい」九州随一のサブコン、雇用で技術承継へ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

中村工業(株) 代表取締役
中村 隆元 氏

中村工業(株) 代表取締役 中村 隆元 氏

 福岡を拠点に活動する専門工事業の中村工業(株)は、今年4月に創業117周年を迎えた。天神ビッグバンや博多コネクティッドなどの福岡市都心部での再開発をはじめ、長崎の駅前再開発、諫早のソニーN-TEC新築工事など大型工事が同時進行するなか、同社・中村隆元社長は人手不足への危機感を募らせる。とくに熊本で進む台湾の半導体工場新設は、今年9月から来年いっぱいにかけて躯体工事が佳境を迎えることで、今後、さらに多くの人手が必要になっていくという。

大型工事が同時進行する九州

 ──九州各地で大型工事が進んでいます。

 中村 2023年から24年にかけて、九州各地の大型工事が続々と竣工を迎えます。福岡市では天神ビッグバン、長崎県では駅ビル再開発、(株)ジャパネットホールディングスの子会社・(株)リージョナルクリエーション長崎の長崎スタジアムシティプロジェクト、宮崎県の国民スポーツ関連事業、鹿児島県では京セラの新工場や馬毛島プロジェクト、そして種子島の宇宙センターなどです。

 そのようななかで、台湾の半導体メーカー熊本工場も着工しました。先ほど述べたように九州では大型工事が同時進行していることもあり、人員の配置が難しいですね。私たちもこれまで多くの大型工事に携わってきましたが、半導体工場はスケール感がまったく違うなと驚かされています。

 ──九州外からの応援も要請せざるを得ない状況なのですね。

 中村 たとえば、長崎県の現場が終わったら次は熊本県というように、これまでは各現場の工期の合間を見て、人員配置を調整できていたのですが、現在のように各現場で工期が重複していると、各現場担当を動かすことはできません。

 大手ゼネコンさんの九州支店では、本年、1,000億円を超える施工高を上げなければいけないと聞きます。九州に大型工事が集中しており、九州以外から職人さんが来てくれないとこなせないほどの仕事量の多さです。

深刻化する人手不足、対策は

 ──やはり人材の確保と定着が、業界の課題ですね。御社では長い間、職人の雇用を維持されてきましたが、現在の人手不足をどう捉えていますか。

 中村 リーマン・ショック後、当社の売上高は4割も減少しました。当時、同業の経営者たちは、景気の低迷に合わせて事業規模の縮小、人員の削減を推し進めました。しかし、当社ではそれとは反対に雇用を維持してきました。根底にあるのは、当社で培ってきた技術・技能を未来に向けて伝承していくという強い覚悟です。

 毎年10人を目安に増員を続けてきたことで、需要増にも何とか応えることができています。業界では長い間、いわゆる“一人親方”問題が議論されていますが、当社の社員は全員社会保険に加入しています。今年4月には4名の新卒採用を行いました。来春も10名程度の採用を見込んでいます。

 もちろん課題がないわけではありません。他の産業と比べて、専門工事業の平均年収は決して高いとはいえません。終身雇用の発想がない業種では、初任給を比較的高い金額に定め、入社後の賃金上昇率を抑えるケースが散見されます。対して、当社は終身雇用を第一に考えますので、初任給を高めに設定することは難しいのですが、経験を重ねることで徐々に給与が上がっていく仕組みになっています。

中村工業(株)    国土交通省が発表している19年時点の建設業労働者の年間賃金総支給額は約462万円、製造業は約479万円、全産業では約560万円と、平均年収に開きがあります。業界としては他の産業とも比較しながら、意識して給与水準を上げなければならないと思っています。当社も今春の採用から初任給を上げました。

 人材確保は、年々厳しさを増しています。とくに高卒採用については、これまでは製造業との競合が主でしたが、最近は大手ゼネコンも参入してきています。加えて近年、九州では工業高校生の進学率が50%を超えているのが現状です。少子化で大学側も生徒獲得に必死になっています。「募集しても来ない」と言っている企業もいますが、高校や専門学校へ定期的に訪問して求職状況をヒアリングしたり、こちらから会社概要をプレゼンするなど、本当に危機感をもって動けている経営者は少ないと思います。直接モノづくりに携わっている専門工事の魅力を、どのように若い人たちおよび保護者の方々に見せていくかも、真剣に考えていかなければなりません。

【内山 義之】


<プロフィール>
中村 隆元
(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校および福岡建設専門学校卒業。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。


<COMPANY INFORMATION>
中村工業(株)

代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
TEL:092-751-9381
売上高:(22/3)96億1,732万円
URL:https://nakamura-k.com

  • 1
  • 2

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事